公的支援制度を拡充し、真の小田急博物館を
生方氏のメールは続く。すこしだけ文章を整理するに留めて、彼の思いを記したい。
〈知人から報道公開の写真を見せていただき、ロマンスカーミュージアムの内容はわかっているつもりです。実は私は、車両保存は積極的賛成でしたが、昨今の鉄道系博物館のような、こどもの人気をネタに人集めを行い入場料金で運営費の一部をまかなうという考えには反対でした。鉄道文化の歴史保存、沿線地域と鉄道の100年ちかくの共存と発展の歴史の保存は、企業として当然行う責務と考えます。
棚田や白川村の保存をNPOなどが一生懸命やっているように、企業も自ら資金を集め、国もこうした活動を税制面などで考えるべきと思っております。したがってミュージアム開館、即賛成という気持ちではありませんが、これを機に(車両や企業文化などの)保存について社会全体で考えて欲しいと思っております〉
〈企業が、一般公開せずに過去の技術を保存し、一般公開せずとも後世に伝えようとしている例は、工業界には沢山あります。本来なら国鉄(JR)、私鉄、軌道ともども各社が共同で保存に務めるべきです。国が技術史保存のため費用を援助するとか、税制の特例を認める。そうすれば入館者から入場料をとらなくても済みます。
しかし、大阪城や熊本城も入館料をとっています。歴史的保存物です。日本では歴史的保存物の範囲すら明確にしていません。青色発光ダイオードのようなノーベル賞クラスのものも(後世に振り返れば技術遺産になるはずで)あり、どこまで国が援助するのか。文豪が住んでいた居宅などの保存は、市町村が援助するか一般の寄付に頼るか。そのクラス分けも曖昧です。
企業の保存事業を脇でみていると、ある程度は自力で行えるでしょう。しかし、もともと企業は収益を上げるためにつくられたものだけに、不景気になれば尻つぼみになるのは当然です。そうなれば、車両保存展示は企業に力があるときの誘客宣伝のためになりがちです。やはり第三者機関や国が目を光らせるべきでしょう〉
ロマンスカーミュージアムは楽しい施設だ。これは間違いない。しかし、小田急内部にはもっと重要な鉄道資産が眠っているようだ。2200形や9000形の展示を含め「真の小田急博物館」が設置できたらいいな。これからの小田急電鉄の企業活動に期待したい。
写真=杉山淳一