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動悸、めまい、疲労感…実はあなたも? 渡辺徹さんも診断された「大動脈弁狭窄症」特徴的なその症状

2021/05/04

 俳優の渡辺徹(59)が6月に予定していた舞台の降板を発表した。理由は、大動脈弁狭窄症の治療のため――。

 長く糖尿病を基礎疾患として持つ渡辺。2012年には虚血性心疾患と診断され、カテーテル治療(血管内に細い器具を挿入して狭窄部を内側から膨らませ、ステントという金網を留置して再狭窄を防ぐ治療法)を受けている。また、2016年からは糖尿病性腎不全による人工透析を続けてきたという。

 そんな渡辺を襲った大動脈弁狭窄症とは、いったいどんな病気なのか。

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俳優の渡辺徹を襲った大動脈弁狭窄症とは ©iStock.com

大動脈弁狭窄症はどんな病気?

 この病気を理解するには、心臓の仕組みを理解する必要がある。

 心臓に4つの“部屋”があるのはご存じの通り。右心房、右心室、左心房、左心室の4区画だ。

 全身から静脈を通って心臓に流れ込んできた血液は、まず右心房に入り、次に右心室を通ると一旦心臓を出て肺に送られる。肺で酸素を与えられた血液は再び心臓に送られてきて、左心房、左心室を経て心臓を出ると、大動脈を通って全身へと送られていく。

右心房→右心室→左心房→左心室をへて血液は全身に送られる。心臓を出て行く血液が最後に通るのが、左心室の大動脈弁だ ©iStock.com

 それぞれの部屋の出口には“弁”が設けられている。この弁によって血液は先には進めても戻れない「一方通行のドア」の役割を果たしているのだ。

 弁にはそれぞれ名前が付いている。右心房の出口が「三尖弁」、右心室の出口が「肺動脈弁」、左心房の出口が「僧帽弁」、そして左心室の出口にあるのが「大動脈弁」だ。今回渡辺を襲った病気は、心臓を出て行く血液が最後に通る大動脈弁が機能不全に陥る病気だ。

大動脈弁は負荷が大きく「傷みやすい」

「心臓の弁が傷んで逆流するようになったり、開閉しづらくなることで、心臓に過度の負担がかかっている状態を総称して『心臓弁膜症』と呼びますが、その中で最も多いのが大動脈弁の狭窄です。大動脈弁は左心室から全身に血液を送り出す“最も力のかかるところ”にある弁なので、他の弁よりも負荷が大きい。なのに、構造はデリケートなので傷みやすいのです」

 と語るのは、大森赤十字病院(東京都大田区)心臓血管外科部長の田鎖治医師。

 大動脈弁に限らず、心臓弁膜症が進むと血液が停滞したり逆流したりして、全身に必要な量の血液を送ることができなくなる。この状態を「心不全」とよび、命に関わる危険な状況を招くことになる。早急かつ的確な治療が必要だ。