2006年以降の「マジック」は……
過去の名場面にフィーチャーしたエキスパンション「時のらせん」が2006年にリリースされると、にわかに「マジック」のリバイバルブームが起こった。「マジック」第1弾の誕生から13年後の話だが、今日から振り返るとそれも15年前ということになる。
この頃に日本における「マジック」人気は持ち直し、世界的なシリーズ展開が今も続いている。もっとも日本のTCG市場が、1999年頃のような「マジック」一色になることはもうないだろう。小中学生が遊ぶのが「遊☆戯☆王」や「デュエル・マスターズ」などの国産TCGで、コアなカードゲーマーが遊ぶのが「マジック」……という棲み分けが成立し、現在も続いているように思える。
リバイバル期に「マジック」に帰ってきたプレイヤーの場合、そうでなかった層と比べて、ゲームへの定着率が高いようだ。だから2006年より後の「マジック」を“懐古趣味”の対象とするにはすこし違和感がある。
したがって「時のらせん」以降では、死蔵されているカードの割合もだいぶ少なくなりそうだ。そういった理由から、懐古を兼ねた人気カードの紹介は「ラヴニカ」ブロックまでで終わりとしたい。
“マネーゲーム”としての「マジック」
今日では、「マジック」の古いカードがマネーゲームの材料になっている。過去10年の値上がりが堅調で、各種金融資産と比べても魅力的な投資対象だと考えられているからだ。実際に、投機的な動きで高騰しているとしか思えないカードも何種類か存在する。
しかし「マジック」には特有のリスクがあることも忘れてはいけない。ゲームのルールは基本的にウィザーズ社の専権事項であり、これまで強かったカードが一気に弱くなる可能性が常にある。また「再録禁止リスト」に含まれるカードは再印刷されないことになっているが、もっと強いカードが新しく印刷されてしまえば、古いカードの価値は相対的に減じられる。これまで見てきたように、発売当時の最強カードが安値になり、軽んじられていたカードの値段が高騰する、といった例は枚挙にいとまがない。
もしも「マジック」のカードに投資して一攫千金を……と思うのなら、その前に学ぶべきことがたくさんある。ゲームのルールや公式大会の結果はもちろんのこと、人気のイラストレーターは誰かとか、「マジック」のゲームクリエイターがどんなコラムを書いているかとか、あるいはプレイヤーが古いカードにどんな感情を抱いているかとか、そんなところまで理解する必要があるだろう。その上でなお、「マジック」の古いカードを買うのは賭けである。くれぐれも自己責任でお願いしたい。
秘蔵するか、それとも手放すか
「マジック」が流行った頃といえば、強いカードをかき集めるのがとにかく楽しかった。我々ゲーム少年にとっての「マジック」とは、小遣いを全額はたいてもいいと思えるほどの趣味だったのだ。そういう思い出を大切にしたいオトナにとっては、現在の相場なんて情報は“知らぬが仏”のガッカリ箱かもしれない。
だから、熱い思い出の宿る古いカードを、取っておくのも売り飛ばすのも個人の自由である。しかし、価値を知らないまま紙くずとして処理してしまうのはもったいないということだけは、この際断言しておきたい。
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※本稿中の情報は2021年5月6日現在の取引相場であり、掲示した価格で売り買いできることを保証するものではありません。また算定にあたっては、平均的な状態で、なおかつFOIL(キラ)ではない日本語版カードを想定しています。
画像=ジャンヤー宇都、公式HPより