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「ついに首を発見」

 騒ぎがエスカレートする中で、5月12日付毎日朝刊社会面トップに載った「新大橋から大きな包み 投げこむのを見た 大学生が届出 バラバラ死体捜査進む」という記事が大きな意味を持ってくる。埼玉・川口署に荒川区の男子大学生(19)が「9日午後9時15分ごろ、川口市本町2丁目の新荒川大橋から約1メートル大の包みを同放水路に投げ込んだ怪しい男を見た」と届け出たという内容だ。

目撃証言、推理……事件で過熱する紙面(毎日)

 そして胴体の発見から6日目。「ついに首を発見」(5月15日付朝日夕刊社会面トップ見出し)。15日午前9時50分ごろ、荒川区三河島の瓦職人が「西新井橋の上流約1キロの南岸(足立区千住桜木町3125)に新聞紙に包んだ首が漂着しているのを発見。(捜査)本部に届け出た。場所は先に胴体の発見された“日の丸プール”の対岸、約300メートル下流の地点である」と同記事にはある。

「首が出た!」ニュースの脇に被害者の身元情報(夕刊読売)

 別項で検証を終えた浦島一課長からの発表内容が載っている。それによれば

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(1)    外傷はなく、頭髪は2寸5分(約7.6センチ)ぐらいの長さ

 

(2)    全体として若い感じで20代から30前後とみられる

 

(3)    首の切断した所はメスで数回やり損じながら切ったらしい跡があった

 

(4)    最も有力な手掛かりになると思われるのは歯。上の門歯2枚が「サンプラ」(歯科用ニッケル合金)で、上下とも虫歯が多く、根だけになっている

 と判断。頭部の状態は「絞殺あるいは扼(やく)殺であることを物語っているものと思う」とした。また「胴体の発見場所とあまり離れていない点と合わせて、死体を捨てた場所はこの位置からかなり近い所だとみられる」とも。

見えてきた「事件の全容」

 同じ日付の毎日は年齢を推定22~23歳とした以外はほぼ同内容。だが、読売は早くも被害者の身元を“特定”している。それは警官だった! 記事の見出しは「志村署の警ら係 事件二日前に行方不明」。小さい顔写真も入っている。本文はこうだ。

 志村署ではバラバラ事件発生2日前の8日夜以来行方不明になっている板橋区志村蓮根町1457、同署警ら係2班、伊藤忠夫巡査(26)について極秘裏に捜査していたが、15日朝、西井署長から捜査本部に連絡した。

 

 現在までに分かったところによると、同巡査は8日夜10時ごろ、板橋区志村蓮根町の自宅に酔って帰宅したが、妻冨美子さん(24)=志村第3小教員=に「ちょっと出かける」と、警察手帳を机の上に置いたまま、ネズミ色合いズボン、盛夏略衣、黒短靴姿で外出したもの。

 

 なお、同巡査は右額に古い傷痕があり、前歯にサンプラ2本を入れており、頭髪は長く、鼻は普通である。(昭和)23(1948)年4月、警視庁巡査となったが、酒癖が悪く、昨年5月10日、私服で帰宅の途中、飲み屋で客と口論。格闘をした挙げ句、拳銃を奪われ、間もなく拳銃は発見されたが、このため減給処分に付されたこともある。

 この時点で事件の全容が見えてきたともいえる。