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最強の棋士像【流れゆく水のように 豊島将之竜王・叡王インタビュー 第2章】

source : 提携メディア

genre : ライフ, 娯楽

note

──無駄に読み過ぎて疲れちゃったり?

「そうですね」

──そういう部分って、『将棋の真理を追い求める』というよりも『相手を上回れればいい』というほうが大事なんですか?

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「どっちも大事なんですけど……相手を上回る、が行き過ぎると良くなかったりすることもあります」

 撮影を担当する諏訪さんから、モコモコしたものが投入された(※消毒済み)。
 はにかみつつ、豊島はモコモコを手の中で遊ばせる。
 意外とノリノリ……というか、楽しそうだ。そして口調も滑らかになったように感じる。諏訪さんの秘策は大当たり。
 ふと思いついて、こう尋ねた。

 

──私は家でずっと一人で小説を書いていると、かえって効率が悪くなることがあるというか……ちょっと気分転換になるものを近くに置いてたりするんですけど。豊島先生も、何か手元に置いていたり?

「家で(研究を)やるときは、けっこう扇子を使ってますね」

──ご自宅で扇子を?

「家のほうが扇子、使ってます」

──実は……けっこう豊島先生、扇子パチパチするの好きだな……と思って中継を見ていたりしました(笑)。

対局には持って行かないこともあるんです。持って行くと、パチパチしたくなってしまうんで(笑)

──あ!『今日はちょっとパチパチしすぎだったな……』と反省したり?

「パチパチ、あんまりやりすぎるとよくないですよねぇ(笑)」

──扇子について、おうかがいしたいことがあったんです。私、豊島先生が二冠になられた時の記念扇子を買わせていただいたんですが……。

「ありがとうございます」

──あっ、そういえば初めて『二冠』とサインした相手は、王位獲得の翌日に乗ったタクシーの運転手さんとご著書にありました。将棋好きな運転手さんだったんですか?

「そうですね。そんな感じでした」

──いかがでしたか? 初めて二冠と書いた気持ちは?

「『え? このシチュエーションなのかぁ……』って(笑)」

──ははははは!