ウェブトゥーンのサイトである「ネイバーウェブトゥーン」では、「挑戦マンガ→ベスト挑戦マンガ→正式連載」という昇級方式があり、さらに「レス数、星点評価、シェア数」が明らかにされ、読者のトラフィックの重要性が増した。
さらにウェブトゥーンでは、作品の中身も変化した。
まず、物語(ナラティブ)の展開をスピードアップさせた。時間をかけて主人公の成長を描くより、最初から主人公が問題を解決するような展開が重要視され、主人公の努力の瞬間はほとんど消えていった。
読者とのコミュニケーションを取りやすいように、主人公の内面を直接「一人称」のナレーションで伝えることが主流となった。
こうしたウェブトゥーンにおける変化は、すべてモバイルコンテンツ特有の「速度」に対応するためだった。ウェブトゥーンは出版される紙のコミックスとは異なり、物語・演出・連載周期のすべての面において「速度」が重要とされるようになったのだ。
『鬼滅』の一人称ナレーションが“ハマった”
この流れに『鬼滅の刃』はピッタリと重なった。
『鬼滅の刃』は、韓国の若い世代に馴染みのあるウェブトゥーンのように、主人公の竈門炭治郎の一人称のナレーションが繰り返し使われている。
一人称のナレーションで感情や状況を説明し、作画のスタイルも“萌え”を強調せず、自然なタッチを見せてくれた。主人公のキャラクターも、日本で一時期流行した「ひきこもり」のキャラクターのように内向的でなく、外向的で優しく、家族を守ろうとする努力も親近感が湧いた。
そして、何よりもストーリーの進行速度が速かった。
原作コミックスでは、第1話で炭治郎は鬼に家族を殺され、第3話で鱗滝左近次を訪れ、修練を始める。第4話で最終選別に出て鬼たちと対決しながら多様な技を駆使する。
以前のマンガなら数冊にわたるはずのストーリーが、数話でスピーディーに進められた。ネットフリックスで『鬼滅の刃』シーズン第26話までストリーミングで鑑賞したファンは、韓国語に翻訳された原作コミックスを購入し、その後の展開を確認したいと思ったのだ。
これまでのように、長期連載で完結が見通せないためコミックスでの購読を諦めざるを得なかった従来の日本のマンガとは異なり、『鬼滅の刃』は先述の通り、韓国でも2021年4月に23巻で完結している。
このような様々な要因により、『鬼滅の刃』は韓国で日本マンガの“第3波”となった。