年の近いライバルがいるのはすごくいいこと
――八代先生にとって「同世代」は何学年差まででしょうか。
八代 1学年上から1学年下までです。2つ離れるとちょっと違うというイメージです。1学年上の永瀬(拓矢)王座も同世代と思っています。言いにくいけれど、今のところ、同世代ではタイトル複数期の永瀬さんが一番実績があるのかなと思います。この世代で誰が活躍していて、誰は活躍していないという評価はどうしてもされてしまう。これから自分も頑張って、この世代で活躍している側に入らなければと思っています。
――八代先生の同学年に7人、1学年下にも7人、1学年上には4人棋士がいて人数が多い世代です。同世代が多くて良かったと思うのはどんなところですか。
八代 奨励会では、年上は威圧感があって、なかなか練習対局をする間柄にならないのです。そんな中で、同世代がいて練習対局できるのは良かったです。歳の近いライバルがいるのはすごくいいこと。「こいつには負けられない」という気持ちでお互いを高め合うことができますから。同世代と刺激し合いながらやってきたことで自分も強くなれたと思います。
――仲が良くてもライバルという関係は、普通の友情とは違うのでしょうか。
八代 僕は地元に将棋とは関係のない友達もいて、コロナ禍で少なくなったけれど、地元に戻ると、彼らの車に乗せてもらって遊んだり、食事したりしています。彼らと話す内容は全部本音で、嘘偽りないです。高見君や三枚堂君と話すときはライバルという意識があるから、無意識のうちにかっこつけたい気持ちがある。「弱いと思われたくない」という意識が働きます。半面、棋士の悩みは独特で、将棋を知らない友達には分からないし、親兄弟にも分からないから、仲の良い棋士にしか言えない話はやっぱりあるのです。
地元の友達は僕を「わたる」って呼びます。将棋の友達にはそう呼ぶ人はいなくて、同年代の仲良しには「八代」と呼び捨てされることが多いです。他の棋士にも同世代は苗字呼び捨てが多いですが、勇気はみんなから下の名前で呼ばれています。覚えやすい名前だからですかね。僕も将棋の友達から「わたる」と呼ばれてもいいのですが、そうなりませんでした。
――同世代と旅行に行かれたりはするのですか。ABEMAのタラレバ検討会で、高見七段、三枚堂七段、都成竜馬七段、佐々木大地五段で旅行に行った話が出ていましたが。
八代 僕は対局のため旅行に置いていかれてしまった話ですね。実は、同世代との旅行はないのです。高見、三枚堂、自分はみんなお酒が好きで、朝まで飲んだりは何回かしています。コロナ禍で飲めなくなって寂しいです。タラレバ検討会では、渡辺明名人と戸辺誠七段に誘っていただいて旅行をした話もしました。渡辺名人がどこで何を食べるとか計画を立てて、戸辺先生が1人でずっと運転してあちこち連れて行ってくれ、めちゃくちゃお世話になりました。