将棋の成績で先を越される悔しさ
――やっぱり先を越される悔しさはあるものなのですね。自分にだってタイトルが獲れるとか獲りたいとか思ったりすることもありますか。
八代 しばらくは「高見がタイトルを獲れるんだから、俺にだって獲れる。だから頑張らないと」と自分に言い聞かせていました。でも、獲得から3年が経って冷静に考えられるようになりました。当たり前だけれど、タイトルを獲るというのは大変なこと。高見君の才能と努力があってタイトルが獲れた。もちろん、自分もタイトルを獲りたいという気持ちに変わりはないけれど、今は「高見が獲れるんだから、自分も」とは思っていません。
――将棋の成績に関しては、相手が良い結果を出したとき祝うより悔しい。だけれど、他のことでは祝えるのでしょうか。例えば、高見七段が5年かけて大学を卒業されたとき、卒業証書を八代先生に見せたという話を読みました。そんなときは一緒に喜ぶわけですか。
八代 もちろん喜べないのは将棋の成績に関してだけです。卒業した後に一緒に食事をしてワインを飲んで、嬉しそうに卒業証書も見せてくれました。同世代で大学に行った人は少なくて、僕も行っていません。でも「高見は大学も頑張ってたもんなあ。卒業できて良かったなあ」と思い、心からおめでとうを言いました。
――高見七段は女性ファンに大人気という話も聞きます。そういうところで対抗心は?
八代 全然ないです。高見は人から愛されることに関しては、天賦の才があるんです。女性ファンにプレゼントをもらっているのを見て「高見さん、いいねえ。うらやましいねえ」とからかったりはしますが、自分ももっと女性ファンを増やしたいとは思わないですよ。
むしろ、高見が人気あるのは嬉しいというか。自分の一番仲の良い友達が、嫌われているより好かれているほうが、ずっといいじゃないですか。高見は人柄が良いので、ファンの皆さんは見る目があるなと思います。