だれかの「ひと言」にイラッとしたこと、ありませんか? もしくは、「悪気はなかったのに、ちょっとしたひと言で相手を不機嫌にさせてしまった」というような、苦い経験はありませんか? カウンセラーとして、2万人以上の社会人にコミュニケーションの指導をしてきた大野萌子さんの著書『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』より、人間関係がぐんとスムーズになる「言葉のかけ方」を紹介します。まずは「お願いごと・頼みごと」編です。(全2回の1回目/「断り方」編に続く)

©ヤマサキミノリ

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「ちゃんと」「しっかり」「徹底的に」は具体的に

 

 細かい作業が必要なときに「徹底的にお願いします」という言い方をすることがあると思います。これも36ページの「ちょっと」と同じあいまい表現なので、注意が必要です。

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 わかりやすい例として、建設現場や工場でよく聞く話をしましょう。危険をともなう仕事に関わる人たちに対して、「徹底的にしっかりと安全確保してください」と指示する場合があります。「徹底的に」というのはとても強い言葉ですし、基本的な理解があればそれで問題ないように思いがちです。ところが現場は、外注や下請けも多く、本来の業務内容を理解していない人もいます。その人たちが自分の感覚で「このぐらいでいいだろう」と自己判断して、ケガや事故を招いてしまうケースが多いのです。

 こういう事態を避けるためには、「この作業はここまでやって安全確保をしてください」と、誰が聞いても理解できる具体的な数字などを入れて「細かい指示」をしなければいけません。「徹底的に」と似た言葉で、「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」も一般によく使われていますが、言ったほうと言われたほうの間で、「何をどこまでやるのか」を確認していないとトラブルにつながります。

 自分の要望や期待は、1から10まで説明しなければわかってもらえない。そう思って面倒でもひとつひとつ相手に伝えることが、結果的に物事をスムーズに進めるコツなのです。