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 まさにこれが典型的な間違いである。筋トレの基本はゆっくり上げて、ゆっくり下ろすことだ。上げるときも下ろすときもゆっくり行なうことで、筋肉に大きな負荷がかけられるからである。

 どんなにたくさんの回数をこなそうとも、ラクなフォームでやっていてはほとんど意味がない。

 たとえば、「腹筋1000回」。1000回もやろうという人は、ちょこちょこと頭が上下するような「負荷の軽いやり方」をしていることが多い。私は「ちょこちょこ腹筋」と呼んでいるのだが、そんなラクなフォームでやっていては、たとえ1000回やったとしてもたいしたトレーニング効果は得られない。むしろ1000回をこなすためのラクなフォームでやっているように見える。

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「30回以上できるトレーニング」は時間の無駄

 そもそも筋トレでは、「30回以上できるトレーニング」は、それ以上やっても負荷として成立しないとされている。30回できるようになったら負荷を上げなくてはならず、同じ軽い負荷のまま50回、100回、200回と回数を重ねてもあまり意味がないのだ。

 だから、「それまで15回しかできなかった人が30回できるようになった」と言うのなら、それなりの負荷があったということなので価値があるが、「すでに30回、50回、100回をクリアしている人が200回、500回、1000回できるようになった」としても意味がない。

 考えてもみてほしい。もしも1000回できるならば、おそらく最初の100回くらいはラクすぎてトレーニングになっていないはずだ。たくさんの回数をこなすためにがんばってきた人には悪いが、負荷の軽いラクなフォームで多くの回数を行なうのは、ほとんど時間を無駄に消費しているだけのようなものなのである。

「ベンチプレス150キロ」にしても同じだ。

 ベンチプレスという種目には、じつは重量を上げるのに都合のいいやり方がある。そのラクなフォームで行なうとバーベルが上下する移動距離が短くなるのだ。「100キロ」「150キロ」といった数字に囚われている人は、当然、このラクなフォームで高重量のバーベルを上げようとすることが多い。もしベンチプレス大会で勝つことが目的ならば、このフォームで正解だ。

©iStock.com

 しかし、筋肉を強化したり太くしたりするのが目的なら、このフォームは不正解となる。ラクなフォームで行なうと、それだけ目的の筋肉を鍛える効果が低くなってしまうのだ。

 アスリートやボディビルダーにもベンチプレスを行なう人が多いが、ジムなどで見ているとラクなフォームで行なっている人が少なくない。おそらく、トレーナーが重量を上げるのに都合のいい方法を教えているのだろう。

 ただ、私はいつもそういう人を見かけると、「そのラクなフォームであなたの目的の筋肉がちゃんと鍛えられているんですか?」と聞きたくなる。そして、「もしかしてキロ数を追いかけるあまり、トレーニングを始めたもともとの目的を見失っていませんか?」と聞きたくなるのだ。「1000回」「150キロ」があなたの目的なのですか、ということだ。