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「家の中にあるはずなのに、見つからない…」“片づけられない人”が知らない「たった一つの原則」

『 ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本』より #1

2021/07/13
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 ADHD傾向が強い人は、興味・関心、特に新しい刺激に惹かれやすいことに加えて、一度に覚えていられる記憶の容量がとても少ない。すると、興味深い事柄が目の前に現れると、今まで手に持っていたものや使っていたものの存在が頭の中から消えてしまい、無意識のうちに意図しない場所に物を置いてしまう。あるいは気を付けて決められた場所にしまったとしても、その場所を覚えていられず、どこへしまったのか忘れてしまう。

 ASD傾向が強い人で片付けが苦手な場合は、そもそも片付けの意味や必要性を認識していない。このタイプは、多少散らかっていても、物がどこにあるか覚えていられる。そのため、たとえ散らかっていても本人はそれが困ったことだと感じることができない、あるいは本人が散らかっている状況に耐えきれなくなるまで散らかしてしまう。

 また、片付けができたとしても、それは「どこに何があるかを覚える」「決めた場所へ戻す」という1対1パターン行動なので、引越しなどでしまう場所が変わってしまうと、混乱して片付けられなくなる場合もある。つまり、取っている行動は片付けでも、片付けの意味や理由を抽出して他の場面に応用できないのだ。

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 片付けを習慣付けるには、日常生活で行う動作と結び付いた場所に物をどう配置するかにかかっている。それには自分が普段どんな行動をしているのか、その行動はどこでしているのか、そして限られた空間に何を優先させて物を置くのか、といった観点から物を配置することが必要だ。つまり、物、空間、動作を関係付けるということだ。

『 ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本

解決法1―使い終わる場所の近くにしまう場所を作る

 ADHD傾向が強い人は、使うときに多少離れた場所に置いてあっても、そのものに必要性があるのでわざわざ遠くから物を取って来るが、使い終わった途端にそのものは頭の中から消え去ってしまうことが多い。

 この特性にかなうには、使い終わる場所の近くに収納場所を作るのが適切だといえる。逆に考えれば、散らかるのは物の住所が適切ではないということなのだ。

 実際、散らかっている人の部屋は、座っている場所から手の届く範囲に物が半円状に散らかっていることがよくある。だとしたら、そこがその人にとっての「適切な収納場所」と考え、そこにごみ箱と収納棚もしくは箱などを置いて、そこに片付けるという習慣から始めてみよう。

 実は、ソファーやこたつといったくつろいで座るスペースの近くに物は集まりやすい。人は、くつろぐことでそれまで張り詰めていた意識を緩める。すると、それまでやっていたことから休むほうへ意識が移ってしまい、無意識のうちにその場所に物を置いてしまう。