「今日使う資料なのに」「お土産を持っていこうと思っていたのに」――。発達障害を持つ人も持たない人も、うっかり忘れものをしてしまったことは何度もあるのではないでしょうか。
『 ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に働くための本』(翔泳社)より、発達障害支援のプロが教える、忘れものを防ぐ3つの「ちょっとしたコツ」を抜粋します。
事例―「前日までは覚えていても忘れものをしてしまう」
忘れものが多い。 前日に用意していても、 朝出るときには忘れてしまう
今日はいつもと別の事務所で業務。いつもより早起きして、いつもと違う電車に乗る。どうやら問題なく到着できそうで、ほっと安心―しかけたところで、思わず「あっ!」と声が出てしまった。
昨日職場から持ってきた資料、かばんに入りきらないから別の紙袋に入れて自宅に持っていったんだった。今日の仕事に必要だから、わざわざ持ってきていたのに……。
原因―なぜ前日までは覚えていても忘れものをしてしまうのか?
ADHDの脳は、「意識に置き続ける」ことが苦手
モノでも予定でも、うっかり忘れが多いというのはADHDの特徴としてよく挙げられる。学生時代の成績が優秀だったり、趣味の分野では膨大な知識を有していたりと、実はADHDの人の記憶力自体はとりわけ低いわけじゃない。ある記憶を「しまっておいて必要なときに取り出せる」ことと、 「意識の中に持ち続けて、行動できること」は違う能力なのだ。そしてADHDは、後者をとても苦手としている。
本人も、実は「忘れてしまった」わけではないのだ。言われれば思い出すのだから。ただ、その記憶を「しまってしまった」だけで。