本連載で折に触れて述べてきたが、若い頃からなかなか世間に馴染めず、心の拠り所といえば映画館だった。
特に二十歳前後の頃に足しげく通ったのが新宿昭和館。新宿駅東口と南口の間にある路地裏に建っていたこの映画館は、ほぼ東映のやくざ映画ばかり(たまに一九七〇年代以降の時代劇も)、しかも毎日三本立てで上映していた。「ぴあ」を見ても上映時間は書かれておらず、劇場に問い合わせてもよく分からない。ようは、「個々の映画を選んで観にいく」というのではなく、「とりあえずここに来る」という客に向けて上映している劇場だったのである。
それもそのはず。当時の客は近くにある馬券売り場のついでに寄っているオッサンばかり。映画そっちのけで競馬新聞を読んでいる客もいた。目当てのレースまでの時間潰し、馬券が外れた憂さ晴らし、馬券が当たった勢いで、などさまざまな情念を抱えた客たちが集う空間はまさに「昭和」。二十一世紀になろうという時期に、ノスタルジーではない現役の「昭和」がそこにあった。上映されるやくざ映画の殺伐さもあいまって、現代から取り残された薄暗い場所がなんだか居心地がよかった。
今回取り上げる『博徒七人』は、そんな昭和館で観て強い感銘を受けた一本である。
タイトルの通り、七人の博徒が最終的にはチームとして活躍する『七人の侍』的な話なのだが、これが一筋縄ではいかない。博徒たちがそれぞれ身体にハンディキャップを持っている設定なのだ。といって彼らはそのことを卑下していない。皆が必殺の特技を身につけて逞しく生きていた。
沖ノ島を舞台に、採石場の利権を巡る争いを軸に物語は展開。七人はそれぞれに巻き込まれ、時には争いながらも、悪党に蹂躙される人々のために集結していく。
鶴田浩二、藤山寛美、待田京介、山本麟一、大木実、小松方正、山城新伍と七人を演じる面々も粒ぞろいだが、特に普段は悪役側に回ることが多い山本や小松がいることで、ヒロイックなだけでないアウトローとしての人間味も色づけられることになった。
当時の東映映画は、世間から外された者、底辺に追いやられた者に温かかった。それは、そうした人々を「かわいそうな人」と扱ってお涙頂戴の材料にする偽善的な温かさではない。時にカッコよく、時に人間臭く描くことで、誰よりも魅力的な存在たらしめていた。本作がまさにそうだ。
本作は長らくソフト化されないできたが、ついにこの八月に東映創立七十周年を記念して初めてDVD化されることになった。ぜひご自宅でその活躍を目にしてほしい。