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連載昭和事件史

「母校慶応の名誉を傷つけたことに責任を感じている」“残忍で鬼畜”といわれた殺人事件…エリート美男子の「あまりに軽すぎる弁明」

「母校慶応の名誉を傷つけたことに責任を感じている」“残忍で鬼畜”といわれた殺人事件…エリート美男子の「あまりに軽すぎる弁明」

戦場の記憶を呼び起こす血なまぐささ「メッカ殺人事件」#2

2021/07/25
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「非常に派手で金持ちのお坊ちゃんとばかり信じていた」

「メッカ殺人事件78日目に解決 正田、京都で捕まる」(朝日)、「アパート潜伏中襲う “殺したのは近藤”と自供」(毎日)、「京都でアパート住い」「金も使い果たして」(読売)。10月13日付朝刊各紙はそろって社会面トップで大きく報じた。毎日の記事は――。

「正田ついに逮捕」を報じる朝日

【京都発】バー「メッカ」殺人事件の犯人、正田昭(24)が12日午後、京都市内でついに逮捕された。京大法医学教室に保存中の身元不明変死者の首が正田に似ていると話題を投げているさなかの12日午後2時半、京都市川端署では、マージャン仲間の密告により、同市左京区北白川小倉町47、南尚志舎アパートを佐藤警部、奥谷部長刑事ら5名が襲い、1階1号室で山本一夫と称して止宿していた正田らしい男を同署に連行。京都市警本部で追及した結果、正田昭と名乗り、本籍、出生地、現住所、姓名を書いてうなだれた。同本部では人相、年齢、筆跡、自供などから午後3時半、正田と断定。事件はさる7月27日以来、実に78日目で解決した。

 各紙の報道から記述を拾えば次のようになる。

 正田は濃紺の厚地ワイシャツ、薄ネズミ色ギャバジン・ズボンでげた履きという姿。同人が奪ったと推定される三十五万余円は使い果たしたらしく無一文だった(朝日)

 

 佐藤警部らに踏み込まれたとき、正田は6畳の自分の部屋で雑誌を読んでいた。その部屋には、自分で描いた「ルンバを踊る女」「トラになった吉田茂」など3枚の絵が麗々しく壁に張ってあった。警部が「警察の者だが」と声をかけると、平然と「何ですか」と答えて出てきた(読売)

 

 南尚志舎アパートの管理人、佐藤武夫さんの妻俊子さんの話 8月初め、「京大の学生だが、しばらく下宿させてくれ」と制服制帽姿で現れた。非常に派手で金持ちのお坊ちゃんとばかり信じていた。夜はほとんど毎日出歩いて、午前0時ごろ、酒を飲んで女と一緒に帰ってきた。9月中ごろからは小遣いにも事欠く様子で、ここ数日は三度の食事もろくにとっていなかったようです(朝日)

正田が描き、逮捕された部屋に飾っていた絵。交際女性に似ているとされる(「週刊読売臨時増刊」より)

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 密告したのはアパートの管理人とその友人だった。友人は管理人を通じて正田と知り合ったが、以前から金遣いの荒いのに何かあると不審を抱いた。変死体の新聞記事に正田の写真が載ったことから「間違いない」と思い、2人で相談して警察に届けたという。