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 新幹線開業以降、名阪間のシェアは近鉄2、国鉄8と大逆転されていた。しかし21000系の投入でかなり回復した。シェアに関していえば、国鉄の新幹線は圧倒的な座席数があり運行本数も多い。近鉄がどれだけ頑張っても逆転は無理だ。しかし、近鉄が6両または8両の甲特急を1時間に2往復させるぶんの利用者は獲得できた。「足るを知る」というか、新幹線に対しては大健闘と言える。

 2003年に21000系「アーバンライナー」の後継車として21020系「アーバンライナーnext」が走り出した。21000系の登場から15年が経過し、省エネ技術、喫煙や車いす対応など装備面の見直しが必要だ。東海道新幹線が700系「のぞみ」を増やすため、客室設備もグレードアップさせたい。そこで、新形式の21020系を順次導入し21000系と置き換えて、21000系のリニューアル工事を進めた。21000系「アーバンライナー」は、リニューアル後に「アーバンライナーplus」と愛称を変更した。

アーバンライナーnext ©️杉山淳一
アーバンライナーplus ©️杉山淳一

真打ち「ひのとり」の誕生と、名阪特急の未来

 そして2020年。新たな名阪特急のシンボルとして80000系「ひのとり」が生まれた。その背景として、2012年にハイグレードな観光特急としてデビューした「しまかぜ」がある。従来の「新幹線に料金と居住性で勝つ」という考え方に加えて、「乗車する喜び」という価値を名阪特急にも導入する。もうひとつは、名阪特急がノンストップ戦略をやめて、全列車を津に停車させて名阪ではなく「名三阪」とし、三重県経由を利点としたことがある。スピードは数分余計にかかるとしても、乗車機会を増やす戦略をとった。

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50000系しまかぜ ©️杉山淳一

 東京から大阪へ行くときに「新幹線で新大阪へ直行するより、名古屋からひのとりに乗りたい」。鉄道ファンだけかもしれないけれど、その価値のある列車だ。

 リニア中央新幹線が品川~名古屋間で開業したとき、大阪へ向かう人は名古屋で乗り換える必要がある。リニア新幹線は急ぐ人の乗りものだから、ほとんどの人は東海道新幹線に乗り換えるだろう。しかし、観光旅行でリニアに乗った人は「ひのとり」が選択肢に入る。名古屋から旅の楽しみが始まっているからだ。大阪市より南側に住む人も、新大阪より鶴橋、上本町(谷九)、難波のほうが便利かもしれない。名阪特急は、新幹線との競争ではなく、共存という新たな関係を築いていくだろう。

2020年から運行されている「ひのとり」(プレスリリースより)

 日本では手塚治虫氏の漫画で知られる「火の鳥」は、世界の数々の伝説に登場する不死鳥伝説だ。私の世代ではアニメ『科学忍者隊ガッチャマン』の合体飛行機ゴッドフェニックスと必殺技「科学忍法・火の鳥」だ。「ひのとり」は近鉄特急の必殺技。そして名阪特急復活のシンボルだ。競争よりも共存。平和を願う時代にふさわしい列車名だ。