特に男性の場合、正しいスキンケアについて誰かに習う機会はあまりないもの。だからこそ、肌のお手入れの重要性に気づいている男性でも、正しいスキンケア方法について勘違いしている人は多いかもしれない。
ここでは、自ら化粧品開発者や研究者・医師に取材した上で、最新の皮膚科学の研究結果に基づく確かな情報と独自の美容法をSNSで発信するmimi氏が執筆し、化粧品ビジネスマッチングサイトを運営する植村元氏が監修を務めた書籍『インテリジェンススキンケア ベビーオイル洗顔のススメ』(星海社新書)の一部を抜粋。スキンケアの基本原則について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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「スキンケア基本の3原則」とは
「スキンケア基本の3原則」について、まずは紹介します。この基本の3原則は、現在明らかになっている皮膚科学の定説から、健やかで綺麗な肌を目指す上で気をつけるべき、最も大事な3つのポイントをまとめたものです。「インテリジェンススキンケア」をされない方でも、基本の3原則を意識していただくだけで、肌の調子は大きく変わってくるはずです!
原則1 洗いすぎない
角層細胞間脂質(セラミド類)や天然保湿因子=NMF(アミノ酸類)は、高い保湿効果を持ち、「肌のバリア機能」を保持するために重要な役割を果たしています。しかし、これらの保湿成分は、「洗顔」によって流出してしまいます。
特に、NMFは水溶性の保湿成分であるため、汗や水で濡らすだけでも、簡単に流出してしまいます。皮脂もまた、洗顔によって失われます。健康な肌であれば、ふたたび皮脂は分泌され、数時間程度で元の状態に戻ります。一方で、セラミドやNMFは一度失われると、ターンオーバーのサイクルのなかで、ふたたび生み出されるまでに、時間がかかります。その期間、肌が水分を保持する力も弱くなるため、バリア機能は低下し、新たなアレルギー物質や刺激によるダメージを受けやすい、「弱い肌」の状態が継続することになってしまうのです。
もちろん健康な状態の肌であれば、通常の洗顔でダメージを大きく受ける可能性は低いです。しかし、生まれつき保湿成分を生み出しにくい肌タイプの方や、慢性的に肌のバリア機能が低下している方にとっては、健康な肌の方であれば使って問題ない洗顔料も、負担になってしまう場合があります(*1) 。「洗顔により肌が乾燥するのであれば、保湿剤を塗ることで解決するのではないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、肌が生み出す天然の保湿成分に比べると、保湿剤の効果は低いといわざるを得ません。肌荒れしている方が、肌に必要ない保湿成分が配合された製品を使用すると、それが新たなトラブルの火種になる可能性も考えられます。
*1 Charles Crawford, Matthew J Zirwas. Laundry detergents and skin irritancy--a comprehensive review. Skinmed. Jan-Feb 2014;12(1):23-31.
またアジア人の肌は、白色人種、黒色人種に比べると、角質層から蒸発する水分量の値が高く、角層水分量が低く、他人種に比べると、表皮からの分子の浸透もしやすいことがわかっています(*2)(*3)。特にアジア人のなかでも日本人の肌は角質層が薄く、白色人種の角質層が0.03㎜~0.04㎜であるのに対し、日本人のほとんどが0.01㎜程度しかないといわれています(*4)。日本人の肌は、もともとデリケートで、乾きやすい傾向にあるといえるでしょう。
*2 Francis Kompaore & Hiroshi Tsuruta:In vivo differences between Asian, Black and White in the stratum corneum barrier function, International Archives of Occupational and Environmental Health volume 65, pagesS223–S225(1993)
*3 高橋 元次、渡辺 弘子、熊谷 広子、中山 靖久「加齢に伴う顔面皮膚の生理的・形態的変化 (第2報) 人種差の検討」『日本化粧品技術者会誌』1989 年 23 巻 1 号 p. 22-30
*4 デスモンド・フェルナンデス『Dr.フェルナンデスのスキンケアの全て 世界70ケ国以上の人から愛される美容の真実」p.176-177、幻冬舎メディアコンサルティング、2011年9月13日