このようなデリケートで乾燥しやすい肌を守るため、「洗いすぎ&保湿しすぎ」だったスキンケアを、「洗いすぎない&保湿しすぎない」サイクルへと乗せることが、スキンケアを考える上でまず大切な最初の一歩であると、私は考えています。
原則2 こすらない
次にお話しするのは、肌への物理的なダメージについてです。私たちは、日常のなかで、自分で思っている以上に、無意識に顔をこすったり、触ったりしています。その動作が、少しずつ肌にダメージを与えています。
特に顔の肌は角質層が薄い上に、常に外気にさらされる過酷な環境にあるため、もともと身体の肌よりも荒れやすい可能性が高いです。デリケートな環境にある「顔の皮膚」を、日常的にゴシゴシとこすってしまうと、ラップ一枚分の厚みしかない角質層は、簡単に傷ついてしまいます(*5)。
*5 奥田 峰広, 吉池 高志「皮膚洗浄方法の角層バリア機能に及ぼす影響について」『日本皮膚科学会雑誌』2000 年 110 巻 13 号 p. 2115
特に男性は、「ベタつく皮脂をしっかりと落とした方が良い」という先入観に影響され、洗顔時にゴシゴシとこするように洗うなど、日常的に肌への負担が強い行動を取る方が、多い傾向にあるのではないでしょうか。また、毎朝ヒゲを剃ることによるダメージが蓄積すると、年齢とともに肌色が赤黒く変色してしまう傾向があることも、先に指摘したとおりです(*6)。
*6 久留戸 真奈美、菅沼 薫(株式会社エフシージー総合研究所)「20代と50代の日本人男性の肌調査 長期電気シェーバー使用者と安全カミソリ使用者の肌」『日本化粧品技術者会誌』2020年54巻1号、p.48-58
接触による刺激の肌への悪影響とは
また、無意識のうちに顔を触るクセがある方も多いです。ニューサウスウェールズ大学の医学生を対象とした行動観察の研究では、ビデオ撮影された26人の学生は、平均して1時間あたり23回顔を触っていた、という結果が出ています(*7)。(私自身も、考え事をするときに、ヒゲを触ったり、肌をこするクセがある男性の友人を、すぐに何人か思い浮かべることができます!)
*7 Yen Lee Angela Kwok, MBBS, MPH, MHM, PhD,Jan Gralton, BSc (Hons), PhD,Mary-Louise McLaws, DipTropPubHlth, MPHlth, PhD,
Face touching: A frequent habit that has implications for hand hygiene MAJOR ARTICLE| VOLUME 43, ISSUE 2, P112-114, FEBRUARY 01, 2
接触による刺激は、肌のバリア機能に悪影響をおよぼすだけではなく、赤ら顔やシミといった、肌の透明感を低下させる症状の原因となる場合もあります。20~30代の女性の、頰骨付近にモヤモヤと浮き出てくる「肝斑」という難治性のシミは、未だその詳細な発生メカニズムは特定されていませんが、ホルモンバランスの変化や紫外線ダメージと並んで、接触による刺激も原因のひとつだと考えられています。特に顔の中でも、骨が出っ張った頰骨付近によく現れやすいことからも、それがわかります。今までは、肝斑というと、「化粧をする女性が悩まされるシミ」、というイメージが強く持たれていましたが、「メンズ美容」に注目が集まり、男性もメイクをする方が増えているこれからの時代、男女共通の問題となっていくかもしれません。