京都・蓮久寺の三木大雲住職のもとには、助けを求める人が絶えない。ポルターガイストに悩まされている、人形をお祓いしてほしい、さまよう霊を供養成仏させてほしい……。

 そんな実話や自身の体験など、現代の怪談、奇譚の数々を収めた『怪談和尚の京都怪奇譚 幽冥の門篇』(文春文庫)が刊行された。同書には、三木住職が「文春オンライン」で連載していた記事からも、本当にあった“怪奇譚”が収録されている。その中から「子供の能力」を特別再公開。見えない世界に触れることで、あなたの人生も変わる……のかもしれない。

初出:「文春オンライン」2021年1月5日

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「未来って決まっているんですか」  

 そう尋ねられたのは、大谷さんという知り合いの保育士さんです。

 この質問の答えは非常に難しいです。現時点でどのような選択をするかによって、未来は変化しますので、未来はまだ決まっていません。

 しかし、原因があって結果が生じますから、そういう意味では、選択をした時点で未来はある程度決まっているとも言えるかもしれません。

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「なぜそのようなご質問をされるのですか」

 私は、ご質問の意図を探りたくて問いを返しました。

「実は、信じていただけるかどうか分かりませんが……」

  大谷さんは、なぜかとても悲しそうな表情を浮かべながらお話をしてくださいました。

*   *   *

 私の勤めている保育園では、園児を100人ほど預かっているんです。その中には、障害を持つ子供さんが数人おられます。障害をお持ちのお子さんを私がお世話することになりました。

 というのも、私は普通の保育士とは違い、「加配保育士」といって、障害のある園児さんを担当する役目を担っているんです。

 加配保育士には、ただ障害をお持ちの子供さんを見るだけではなく、もう一つの役割があります。それは、その子供達の保護者の方々の相談に乗ることです。

 たとえば、日常の生活のことから、保育園を卒園後、小学校はどこに進学させるべきか、といったことなど、多岐にわたって相談に応じます。そんななか、とても不思議な子供さんと出会ったのです。

「こわいよー。おうちがこわれるよ」

 その子は和也君といって、発達障害を持っている男の子で、大きな声を突然出したり、時々脈絡のないことを口走ったりします。それでも、小さいお子さんばかりなので、特にそれをおかしいと感じる子供はいません。ですから毎日、楽しく過ごしてくれていました。

 そんなある日、その子のお母さんから、子供のことで相談したいことがありますと声を掛けられたんです。

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「普段から脈絡のないことを話す子ですから、あまりその内容については気にしていなかったのですが、ちょっと不思議なことを口走っているような気がするんです」

 お母さんのお話によると、夜中に突然、和也君が「すごくおおきいフーフーがくる。こわいよー。おうちがこわれるよ」と泣き始めたそうです。

 お母さんは「大丈夫よ。お家は壊れないよ」と言うと、お母さんに抱きつきながら眠りについたそうです。

 その1週間後くらいに、大型の台風が直撃し、幸いにも家は大丈夫だったそうですが、その地域に大きな被害がありました。和也君が言っていた「フーフー」とは台風のことだったのではないかと仰るのです。