「十條湯には喫茶スペースが併設されているんです」
2020年から地球を襲った新型コロナウィルスの脅威。それは例外なく日本の温浴業界も直撃。これを機に廃業を決めた銭湯も少なくない。
研雄 「そうこうしているうちにコロナになって、十條湯の経営がかなり悪化していったんです。もしかしたら数年で閉めないといけないっていう事情をお聞きして、お世話になってる銭湯が危機になっているのを指をくわえて見ていられないって気になって。じゃあ、頑張ってやってみますと、今度は兄のゆとなみ社からの出向社員として正式に営業委託という形で再建していくことになりました」
三次郎 「今まで弟は雇われの身だったんですけど、これからは店長として今度は僕の作った経営プランにのっとって進めていくんで、一緒にやっていきましょうって。従業員も、SNSやホームページの運用が得意な若い子を、弟がスカウトして雇いました。それ以外の基本オペレーションを、おかみさんとだんなさんと一緒に研雄がやっていく分担にしています」
一従業員から経営サイドへ。売上の責任を負う立場になった研雄は、銭湯好きのセンスとそのフットワークの軽さで、どこにもない十條湯の強みを新たなビジネスにつなげていく。
研雄「十條湯には喫茶スペースが併設されているんです。本当に珍しいので絶対武器になると思ったんですけど、稼働してなかったんですよ。で、たまたま喫茶店に関して詳しい女の子が知り合いにいて、聞いてみたら、やりますっていってくれて。その子を中心に喫茶店をやってもらっています」
「歳とって銭湯入れないって絶対嫌じゃないですか(笑)」
湊三次郎と湊研雄。東西を股にかけ銭湯の再建を続ける若き銭湯活動家兄弟は、今何を考え、そしてどこに向かっていくのだろう。
三次郎 「僕が始めた当時と比べると、銭湯界隈もかなり盛り上がってきてると思います。若い人達が、日常生活に銭湯を取り入れてくれたり、うちから独立して店を出すことができたり。少なからず自分もそこに貢献できたのかな。そういう意味ではすごくよかったなって思います。
ただ自社だけでやるのは金銭的にも限界だとわかっているので、大きい会社の提案があれば一緒にやるとか、銭湯事業を行いたい会社のコンサルみたいなことを次のフェーズとしてやっていかないと、と思っています。