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危機感も、規制も遅れる日本

 これまで見たように、米国では、外国との共同研究や資金受け入れの透明化を徹底し、安全保障上のリスクを取り除く取り組みが進んでいる。しかし、日本では危機感が薄く、千人計画への参加に関する規制は遅れている。

 読売新聞が21年元日の朝刊で日本人の千人計画参加の問題を報じると、ツイッターなどで「若手研究者が国内でポストを見つけられず、中国に行かざるを得ないことが問題だ」「日本で研究が続けられるように、中国より良い待遇にすればいいだけだ」といった反論があった。

 確かに、取材に応じた研究者のほとんどが、日本の科学技術政策への不満を口にした。北京航空航天大で17年から宇宙核物理学を研究する男性教授は、日本にいた時よりもはるかに多い、5年で約1億円の研究費を得た。男性教授は、「日本の研究者は少ない研究費の奪い合いで汲々としており、大学に残る人は減って、結果として科学技術力が低下している」と語った。

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 日本では博士号を取った後、不安定な任期付きポストに就く「ポスドク(ポストドクター)」と呼ばれる研究者が多い。14年に中国に渡り、16年頃から浙江省の千人計画に参加している男性教授は、「研究職は中国の若い人にとって魅力的な職業だが、日本ではいつクビを切られるか分からないハイリスクな職業になっている」と指摘した。

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 文科省によると、日本の科学技術予算は2000年以降、長らく横ばいが続き、20年には4兆3787億円だった。これに対し中国は、2000年の3兆2925億円から18年には28兆円となり、米国などを抜いて世界トップになっている。

 日本では03年に約1万2000人いた修士課程から博士課程への進学者が、18年は約6000人に半減した。引用論文数の国別順位でも、世界4位だった04~06年以降、中国やフランスなどに抜かれ、14~16年は9位に落ち込んだ。

 科学技術予算の増額やポスドク問題への対応は、日本政府が取り組まなければならない重要な課題である。政府も危機感を強め、21年度から、先端分野を専攻する博士課程の約1000人に1人あたり年間230万円程度を支給するほか、10兆円規模の基金を設け、若手研究者らの処遇改善などを進める。

 日本の研究環境の改善は必要だが、日本人研究者の千人計画参加問題に対するこうした観点からの反論の多くは、軍事転用可能な技術が安全保障に与えるリスクを軽視しており、一面的と言わざるを得ない。