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 三宮駅前の瓦礫の山を見て呆然としていたときだった。

 友人が、ポツリと言った。

「なんでもあり、やったなあ」

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「エッ?」

「いや、なあ、考えてみれば、オレたちの人生、なんでもありやったなあ、と思って。子供のときの阪神風水害、六甲からの鉄砲水に家ごと押し流されて。次は戦争や、ここらへん見渡す限りの焼野原や」

「そうやなあ、さっきから見たことのある風景やなあと思ってたんやが、空襲のあとの瓦礫の山と一緒やなあ」

「それで、今度はこの地震や。ホンマに、なんでもありの人生、やったなあオレたち」

「そういえば、オレは戦後のジェーン台風に大阪の焼跡に建てた急造のバラックで出遭うて屋根飛ばされたこともあったなあ」

 友はちょうどさしかかった生田神社の前で、

「コラ、生田はん、何しとんねん、自分の住居まで壊されよって。今までナンボ賽銭やった思うてんネン」

 と関西人らしい冗談を言って笑ったが、虚空に向けられた彼の目は笑っていなかった。

 その後、私が直接体験したわけではなかったが、東北の大地震という大天災が起こり、その際の原発事故という人災をも日本は経験した。「ナンデモアリ」の人生は、更に感染症ニューコロナの蔓延という百年に一回あるかないかの疫病災害にまで見舞われ、まだどうなるか分からないさ中にいる。この本を作ることを意識の中心に置いて、「百歳以前」を生きてゆこうと決めている。


(「執筆のプロセス」より)