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全く新しい「外来種」のような音楽だった…それでもドリカムが大人気グループになった“納得の理由”

『EPICソニーとその時代』より #2

2021/11/07
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《笑顔の行方》の奇妙なコード進行

 TBS系ドラマ『卒業』(90年)の主題歌。中山美穂、仙道敦子、河合美智子がパジャマ姿で、この曲に乗せて体操をするタイトルバックを、憶えている人も少なくないだろう。

 中川右介によるフジテレビ系月曜9時ドラマ、いわゆる「月9」の歴史を考察した労作、その名も『月9―101のラブストーリー』(幻冬舎新書)には、『卒業』と同クールの「月9」=『世界で一番君が好き!』のプロデューサーだった大多亮がドリカムに主題歌を発注しようとしたというエピソードが紹介されている。

 しかし、ドリカムの新曲タイアップが「3日前に」TBSの『卒業』で決まってしまったため、LINDBERG《今すぐKiss Me》(90年)に代えたとのこと。ちなみに《今すぐKiss Me》は《笑顔の行方》を超える61.0万枚の大ヒットとなる。

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©文藝春秋

 さて、そんな《笑顔の行方》。今回改めて聴き直して、とても驚いた。これは凝っている。いやもっと直接的に言えば、実に奇妙なコード進行の曲なのだ(奇妙すぎて、ここからのコード進行解析には、別の捉え方もあるかもしれないことを、先に断っておく)。

 キー【F】と【 B♭】・【D】の間でひたすら転調を繰り返す。このこと自体は90年の段階で、それほど奇妙なことではないが、キー【F】・【 B♭】・【D】それぞれのパートで、決して主和音に落ち着かないのだ。これは相当変わっている。「♪同じ笑顔はできなくても」の「も」のコード【D】で一瞬落ち着きかけるが、すぐにせわしなく【F】に転調する。

「【C】→【G7】→【C】」─これは、音楽の授業の前、先生がピアノで弾く「起立→礼→着席」のコード進行。この場合のキーはもちろん【C】で、主和音も【C】。だから最後の主和音【C】で生徒は落ち着いて「よっこらしょ」と席に座る雰囲気になるわけだ。