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理想的なスマホライフを送れている子どもは“20人に1人”…稀代の脳科学者が明かすスマホとうまく付き合うための“効果的な対策”とは

『最強脳―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業―』より #2

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衝動を抑える前頭葉

『最強脳―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業―』(新潮新書)

 私たちの脳は生きている間ずっと成長を続けます。脳の中にはかなり幼い頃に完成する部分もありますし、大人になるまで完成しない部分もあります。よく「脳は後ろから前に向かって成長する」と言われますが、一番前の方にある前頭葉が完成するのは、なんと25歳くらいになってからなのです。

 前頭葉は衝動を抑えたり、ブレーキをかけたりする脳の部分です。例えば、高層ビルの屋上のへりで平均台ごっこをするのを止めてくれるのです(そうでなければ困ります)。

 前頭葉は人との交流においても大切な役割を果たしています。交流というのは非常に複雑な活動で、長い期間トレーニングを重ねなければいけません。だから前頭葉が完成するのには長い年月がかかるのかもしれません。言い換えると25歳より若い人たちは、衝動のコントロールがまだあまり上手く出来ないということになります。

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 脳の他の部分はもっと早い段階で完成します。例えばドーパミンのシステムなどは子供の頃にはすでに機能していて、10代の頃は活発過ぎるくらいです。つまり、10代の子供の脳はごほうびに非常に弱いということになります。

 それを聞いて心配になりませんか? ブレーキはまだ作っている最中なのに、今すぐ何かをしたいという衝動は立派に機能しているのですから。実はそれが、子供や若者がごほうびをたくさんくれるスマホのえじきになってしまう理由なのです。

着信音の落とし穴

 脳が良いと思うことをするとごほうびをもらえると書きましたが、実はそれだけではありません。大きなごほうび、つまりより多くのドーパミンが出るのは、実際に何かを手に入れた時ではなく、もうすぐ手に入るかもと思った時なのです。

 ネズミを使った有名な実験があります。レバーを押すとエサが出てくるようになっていて、ネズミはすぐに「レバーを押せばエサがもらえる」ということを覚えました。