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連載昭和事件史

2021/11/21

「社長が考案した帳簿は独特で、悪用すれば脱税なども楽にできるだろう」

「優」の数などは、山崎本人の主張と異なっている。さらに「性格分析」も書かれている。要約すると――。

(1)孤独

「家では『杞憂居士』というあだ名であまり親しく話すこともない。だから、本当の性格を見抜いていない」(兄の話)。「名門気質が強く、友達が少なかった」(中学時代の友人の話)。「寮で同じ部屋に寝起きしたこともあるが、身の上話とか打ち明け話など、一度も聞いたことがない」(一高時代の友人)。恵まれた家庭にありながら生来非常に孤独な人間、あるいは孤高ともいえる

(2)頭がいい

「カミソリのような鋭い感じ」(債権者)。「非常に緻密」(弁護士)

(3)合理主義

「中学時代、文房具屋のおじさんがノートか何かをやったら『これは規則に反する』と言って金を差し出した」(中学時代の友人)。「理屈好き。法律が好きというのも、論理を楽しむ点にあったようだ。例えば、誰かが何かを落として窓の下を歩いている人が死んだ場合、落とそうという意思があったかどうかなど、いろいろ考え、分析し尽して黒白をはっきりさせるのを好む。徹底した合理主義で押していき、感情などを問題にしない」(一高時代の友人)

(4)強い自我

「相当な自信家」(中学時代の友人)。「合理主義で人のやれないことをどんどん実現していきたいという、強い自我を持っていたようだ」(一高時代の友人)。半面、こういうことも。「一緒に電車に乗っていた時、人がひかれた。乗客は皆口々に『気の毒だ』と言い合ったが、彼は無表情で、後で『ひかれた人に同情などしていない。それより、人が飛び込む時、どんな形で飛び込むのかを見るのに興味を感じた』と言っていた」(一高時代の友人)。非情な心情を秘めていたことは見逃せない

(5)実際的能力

「大した経営能力を持っている」(弁護士)。「社長が考案した帳簿は独特で、悪用すれば脱税なども楽にできるだろう」(光クラブ社員)。一方で「学園祭の時、無料法律相談所の模擬裁判で、『父親殺し』の弁護人役をやったが、その減刑嘆願は熱情があふれて素晴らしかった」(一高時代の友人)。ヒューマニズムさえも技巧として完全に駆使できる能力を持っていた。そんな彼が光クラブを始めたのは「金貸しをすれば、世間の裏表が分かるといった考えでしょう。一生の仕事にする気持ちはないようだ」(検事)、「金に執着があるわけではない。もうけることそのものに快感を覚えていたのでもない。自分の合理主義を実証したかっただけ」(一高時代の友人)といった見方がある。ファウスト的遍歴を欲する魂と素晴らしい実際的能力の2つがなければ、山崎のような男にはならない

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