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連載昭和事件史

2021/11/21

「喜劇と悲劇は紙一重」挑発広告

 事業開始から5カ月。光クラブは早くも当局に動きをマークされていた。「東大生」というブランドの力もあり、注目されていたことが分かる。光クラブはこれに対して、挑発的ともとれる対応を見せている。

 同年6月14日付東京タイムズに載せた広告は――。「光クラブは何故(なぜ)有名なのでせう(しょう)? これは堅実と近代性を誇る日本唯一の金融株式会社だからなのです」。さらに6月26日付同紙には秘書募集の広告を載せているが、キャッチコピーがすごい。

「喜劇と悲劇は紙一重である。敗戦社会で諸嬢は何を学び取ったろうか? 近代の自信と叡智は当社の社長秘書にのみ許される。容姿端麗にして事務的手腕と社交性を具え、情熱と理知とに溢れる近代女性は来れ 求社長秘書」

 どこからこういう文章が出てくるのか、不思議に思える。こうしたことが当局を刺激しなかったはずはない。

「喜劇と悲劇は紙一重」秘書募集の広告(東京タイムズ)

摘発された学生社長

 同年7月4日、光クラブは摘発される。翌5日付朝刊。朝日は社会面2段で「『光クラブ』を摘発 学生社長の金融業」の見出し。

 金づまりの街に私設銀行が続出しているが、その一つ、学生社長の「光クラブ」が摘発され、杉並区東田町1ノ18、同社長、東大法学部3年生・山崎晃嗣(27)、同専務、日本医大3年生・三木仙也(25)の両名が4日、京橋署に暴利による物価統制令違反の疑いで留置された。

 同署の調べによると、両名は親類、友人から募って本年1月、中央区銀座2ノ3に資本金600万円(現在の約4700万円)と称して光クラブの金融業を始め、全国に宣伝し、東京国税局からも高いヤミ金利だと警告を受けていたもので、中央区・月島機械株式会社に3月19日から4月23日の期間で76万円(同約590万円)を貸した際、山崎は利子として二割一分(約16万円=現在の約120万円)を天引きし、さらに3万190円20銭(同約23万円)を利息として取り、また5月18日、現金3万円(同約23万円)を同社に貸し付けた時も、日歩70銭(0.7%)の割で差し引き契約したことが法定利子を超過する暴利とみられたもの。別に現金50万円(同約389万円)の貸し付けにつき、10日で一割の利子も取っていたという。山崎は調べに当たり、事実を認めている。

 同じ日付の読売は「光クラブ檢(検)挙 学生社長の高利貸、暴力団使う」の見出しで「融資金返済の督促に専属の暴力団を使った疑いも濃く、帳簿に“若衆飲食代”などとしてその費用らしいものが計上されており、また、銀行、大蔵省方面の買収などについても疑点があり、同署では追及している」と書いている。「一般から月1割の利率で募集した資金を月2割から3割の高利で運転し、総額数千万円に上る大がかりな金融を行っていた」とも。