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「週刊朝日」の記事は最後に「世間では簡単にこの青年に戦後派というレッテルを張り付け、それだけで問題を解決したように思っている」「安直に片付けてよいのであろうか」と疑問を投げ掛けている。

 同年代としての共感もありそうだが、当時の大方の見方に流されない冷静な記事といえる。

「ヤミ金融」に迫る金詰まりと取り締まり

「ヤミ金融も金づまり」。8月29日付朝日は社会面トップでこう報じた。それまで資金を貸していた料飲店や公職追放中の旧財閥、公団などが高利金融業者に金を回す余裕がなくなり、貸し倒れを恐れて資金を引き揚げ始めていること、そのすきを狙って、多額の資金を抱える大商社などが“内職金融”に手を出し始めたことなどを報道。

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 9月12日付読売は「ヤミ金融泣き面に蜂 回収不能と取締まりの追討ち」の見出しで、大蔵省と警視庁が、貸金業取締法が制定されたのに合わせて「銀行法違反行為や暴利の取り締まりに断固乗り出すことになった」と伝えた。

 記事は「極度の金づまりで貸し付け金回収が困難となり、出資者への利払いはもちろん、元金さえも返却が滞りがちとなった」と書いている。山崎らは同年8月、処分保留で釈放されたが、事業は苦境に陥った。そして破綻の時が――。

「ヤミ金融の“学生社長”として取り沙汰されていた光クラブ社長は…」

「学生社長(光クラブ)自殺す 三千万円の金策つきて」(朝日)、「光クラブ学生社長自殺 栄華も夢、金詰りに首が回らず」(毎日)、「光クラブ社長自殺 三百万円の金策つきて」(読売)。同年11月26日付各紙は同じような見出しで一斉に報じた。毎日は社会面3段で記事も短いが、朝日と読売は社会面トップで大きな扱い。内容がコンパクトな朝日の記事を見る。

 ヤミ金融の“学生社長”として取り沙汰されていた光クラブ、銀座金融、同証券保証各社長、東京都台東区浅草雷門2ノ35、東大法学部3年生・山崎晃嗣(27)は24日午後11時50分ごろ、中央区銀座2ノ3の同社の2階社長室で青酸カリをのみ、自殺を図っているのを宿直員の同社経理主任、椎名孝司(28)が発見。直ちに付近の菊池病院に収容したが、間もなく絶命した。

山崎晃嗣の自殺を報じる朝日

 記事はこれまでの山崎社長と光クラブの足どりを述べた後、釈放後は「信用はガタ落ちになり、9月、394名より成る債権者から約3000万円(現在の約2億3300万円)の債権取り立てを食い、百方金融に腐心していた。25日には300万円(同約2330万円)支払う予定であったが、ついにまとまらず、自殺するに至ったもの」と記述。