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「15年越しの思い出がめちゃくちゃにされました」 『ポケモン』リメイク新作に襲いかかった“バグによる怒涛の13日間”のヤバい実態

初週売上は『あつ森』級のヒットとなったが…

2021/12/04
note

プレイヤーによるバグの掘り下げ

 このあとはより深刻で、「メニューバグ」と呼ばれる動作が確認されると、さまざまなことが可能になってしまった。そのうち任意のポケモン・アイテムを増やせるバグが発見されたうえ、しかもそれを高速かつ大量にできるようになった。最終的には一瞬で30匹のポケモン・アイテムを増やせてしまったのである。

 ポケモンにおいて、個体コピーは大きな問題である。そもそも伝説のポケモンは1回のプレイで1匹が原則だからこそレアなのだし、ふつうのポケモンであろうとも個体ごとに能力や性格に違いがある。ゆえにプレイヤーはたくさんのポケモンを集めたり育てて交換するのが楽しいのだが、このバグによって本作におけるポケモン・アイテムの価値は暴落してしまった。

 なお、アイテムのなかには特定店舗でゲームを購入したときの特典で手に入るレアなものも存在する。残念ながら、それも増やせてしまったわけだ。

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 さらに、通常であれば覚えられない技をポケモンに無理やり教えるバグも発見されてしまう。ポケモンは種類によって覚える技が異なることによって差別化を図っているうえ、さらにこの技によってゲームバランスも調整している。ここまでくると本作の略称である「BDSP」を「バグだらけスペシャル」などと揶揄して呼ぶ人も登場し、ユーザー間の混乱は非常に大きくなっていった。そして、この状況を楽しむ人も出てきた。

 

 また、RTA(リアルタイムアタック、いわゆるゲームの早解き)におけるバグ利用も盛んであった。初期はゲーム内のイベント・戦闘をほとんど無視できる状態が発見され、50分を切るタイムで一気にクリアできてしまったことが話題となった。なお、本来はクリアするのに15時間ほどはかかるゲームである。

 ピッピ人形(戦闘を回避できるアイテム)を人間に投げてバトルを回避したり、むしよけスプレー(野生のポケモンと遭遇しなくなるアイテム)を使って最後の敵であるチャンピオンを無視したりと、そのときのRTAですらやりたい放題であった。しかし、最終的には17分台のクリアタイムを記録するプレイヤーが現れる。
 

 

 もはやこの段階になると、最初にメニュー画面を使ったバグを活用して画面外に行き、最後の舞台となるポケモンリーグへ直行してしまっている。待ち受ける敵はすべて釣り竿を使って無視し、そのままクリア。笑うか呆れるしかない状況である。

 もともと『ポケモンBDSP』は作品の質が疑問視されていたうえに、前述のようなバグが大量に見つかったため一種のお祭り騒ぎになってしまった。おまけに公式からのアナウンスもこの段階でも特になく、SNSは荒れに荒れた状況になっていた。

 発売から7日以上経過してもなんら情報が出ないため、文春オンラインから株式会社ポケモンに対し、現状認識に関する質問状を送ることになった。返事が返ってきたのは、バグに対応するアップデートが行われた12月2日。内容は以下の通りだった。

まずは、『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』に関心をお持ちくださり、誠にありがとうございます。

本日11時に、ポケットモンスターオフィシャルサイトにて、更新データのお知らせをご案内いたしました。
https://www.pokemon.co.jp/info/2021/12/211202_at01.html

つきましては、一度上記をご一読いただきたいと思います。