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舞台挨拶で、「主演が夢です」と言い切れなかった福原

 福原遥の実写キャリアの中で大きな作品のひとつである『チア☆ダン』での配役が象徴的だが、チアダンスというスポーツ的な競技の中でアイドル的に可愛らしく踊る癖が抜けない、ちょっと変わったキャラの女の子である永井あゆみを福原遥は演じている。同作を見てみると、広瀬すず、中条あやみ、山崎紘菜、富田望生という5人組の中で、福原遥だけあまりにも声が違うのである。

 よく「実写の人気俳優がアニメ吹き替えをやるとボソボソ声で聞いてられない」というクレームがアニメファンから起きることがあるが、11歳からアニメのアフレコでプロの声優に必死で食らいついて演技を学んだ福原遥にはその逆の現象が起きており、『実写映画なのに声がアニメ』というユニークな存在になっていたのだ。

「私自身は、太い声とかハスキーな大人っぽい声に憧れているんです。だからバラエティー番組などで、素で話している自分を見たときなんかは、『もっとはっきりしゃべりなよ~』と思っちゃうんです(苦笑)。でも、前よりは少し声の高さは落ち着きました」雑誌のインタビューで、そう答えたこともある。

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©AFLO

『チア☆ダン』の舞台挨拶では、夢を聞かれて「毎日幸せに過ごすことが私の夢かなって……(中略)いいかなこれで、いろんな作品で主演をやりたいとか、いろんな思いはあるんですけど……」と言葉を濁した。「主演が夢です」と言い切れなかったのは、「自分の声やキャラクターは主演むきではないのかもしれない」という複雑な思いがあったのではないか。

 その後も、福原遥はアニメ声優と実写若手女優を並行させる稀なキャリアを歩く。2017年には人気アニメ『キラキラ☆プリキュアアラモード』の有栖川ひまり / キュアカスタード 役に抜擢。実写俳優の単発ゲストではなく、伝統のある人気アニメのメインの1人を1年間任されるのは、声優としての信頼を業界から勝ち得ていないとありえないことだ。

 その一方で、実写作品でも『3年A組』『賭ケグルイ』などであっと驚くような演技を見せるようになる。普段の声にアニメ的な虚構性があることを逆手に取り、そこから非日常的な別人格が現れるという演技を、いわばストレートと変化球のように使い分けることができるようになったのだ。