26年前、娘と2人で日本に渡ってきたロシア人のアルビナ。紆余曲折を経て、ロシア料理とバーニャ(ロシア式サウナ)の店IZBAを、福岡県宗像市に作った。しかし2018年、IZBAは火災で全焼してしまう。(全2回の2回目。前編を読む)

 
 

火災のこと

「3年前に火災で施設が全部燃えたんですね。その時は大変でした。本当に沢山の色んな想い出が詰まっていましたし…。火事のあとの片づけは、肉体的にも精神的にも一番辛いものでした。巨大な灰の山を前に、自分でスコップをもって片付けて。3カ月間毎日、来る日も来る日も。友達も手伝いに来てくれたりもして、それはすごく助かりましたね。

 その時はショックが大きくて、どうしたらいいか自分でもわからなくなったんです。でも、必死で片づけながら思ったんです。『幸運なことに、私は生きてるんだなあ』って。それで、まず決めたのは、火事の事は一切、何も思い出さない。思い出したらきりがない。苦しくなるから。確かに愛着あるものは沢山沢山あったけどね…。子どもの小さい時の写真が全部焼けちゃって…それが一番残念ですね…。でも絶対思い出さないように、前に進む。ちょっとでも後ろを向いたらもうキリがない。涙も止まらなくなるし、病気にだってなるかもしれない。だから、前だけを見ながら、早く新しい良いものを作る。私、それでいこうと決めたの。

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 だから周りにいるスタッフにも『私についてくる気があるなら、絶対に火事のことは話すな』ってお願いしたんです。『今は復活できるように、新しい思い出だけをつくっていこう』って。『あれがどうだった』とか『あの時はこうだった』とか、過去を思いだすようなことは『絶対言うな!』ってことあるごとに怒ってました(笑)。