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連載日の丸女子バレー 東洋の魔女から眞鍋ジャパンまで

2022/02/05

source : 文藝春秋

genre : スポーツ

男子選手を交えた“仮想ソ連”と500回以上の試合

 加えて、選手には“1”以外の数字は価値がないと徹底して叩き込んだ。

 全日本監督に復帰した山田は、ミュンヘン五輪の中心選手でその後社業に専念していたヤシカの飯田高子を復帰させた。

 最初の国際大会は、モントリオール五輪の2年前の世界選手権である。メキシコ五輪からの雌伏期間に徹底してギビ監督を研究し、ソ連の選手の癖や性格まで調べ上げた山田率いる全日本は、世界選手権の決勝戦で3−0と完膚なきまでにソ連を打ち砕き、世界女王の座から引きずり下ろした。

宿敵・ソ連を倒すべく全身全霊で戦いに臨んだ山田重雄氏 ©文藝春秋

 五輪や世界選手権などのビッグイベントで日本がソ連に勝ったのは、東京五輪以来10年ぶりの快挙だった。

 山田はモントリオール五輪に向け、さらにチームを引き締めた。日立体育館では男子選手を交えた仮想ソ連チームが結成され、決勝戦をイメージした試合が500回以上も繰り返されたのである。白井が苦笑いしながら語っていたことがあった。

「山田監督は次々に難しい課題をつきつけてきた。私たちは仮想ソ連を相手に練習していたけど、私たちの本当の敵はソ連ではなく山田さんだった。山田さんに参ったと言わせたくて、技を磨いていたようなものです」

 対ソ連対策も万全である。五輪直前に開催された日ソ対抗では、4試合を意図的に2勝2敗で闘う作戦を立て、日本の武器であるひかり攻撃を封印したのだ。

 そんなチームが五輪で負けるはずがなかった。

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