“メグカナ”の双肩に未来がかかっていた
もともと柳本自身も、三顧の礼で迎えられたわけではない。02年の世界選手権で惨敗した吉川監督が辞任し、次の監督候補として協会が本命視していた人物に固辞されたために、東洋紡が廃部になり失職中だった柳本に、お鉢が回ってきただけの話である。柳本も吉原や竹下と同じように、バレー界から見捨てられかけていた指導者だった。
柳本が吉原、竹下、高橋をチームの中核にすえたのは、協会に対する反発からではない。ただ単に、強固なチームを作るためには絶対に欠かせない選手たちだったからだ。
この3人ががっちり組み合わされれば、大山加奈、栗原恵の19歳コンビも実戦で使えるという読みが柳本にあった。187センチの大山、186センチの栗原は、どちらも高校時代から抜きん出たエースアタッカーで、日本女子バレーの未来は、この2人の双肩にかかっているといってもよかった。10年に1人の逸材とよく比喩されるが、その10年に1人の逸材が、1度に2人も輩出されたのは、バレー史上初めてのことである。モントリオール五輪の白井貴子が1度に2人現れたようなものだった。
だが、新人ゆえに技は荒い。それでもチームが結束し緻密なプレイが出来るようになれば、彼女たちの荒削りな部分も、ベテランや中堅がカバーしてくれるはずだと、柳本は目論んだ。