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フィンランドと北海道の共通点

「本当に勉強になりましたね。北海道の課題って、スキー場以外は、冬場をどうするかなんです。フィンランドはオーロラがメインなんですけど、世界中からサウナーも来る。よく考えると風景も北海道そっくりですし、食べ物もサーモンとか、ジビエ、チーズなど、フレッシュなものが沢山ある。実は共通点が多いんじゃないかって気づいて。我々が捉えられてなかった顧客を創造できる可能性があるなと。

 帰国して、十勝サウナ協議会、日本サウナ学会とネットワークを作りました。都会とは違った、フィンランドのサウナ発祥の地『ルカ』の様な大自然の中のサウナを、十勝に作りたいと思ったんです。自然環境の中でサウナ入るって、体験価値としては唯一無二なんですよね。

 ホテルから1時間ほどの場所にある十勝しんむら牧場の社長も、一緒にサウナに入ったらサウナーになってくれたんですが、サウナ上がりに搾りたての牛乳飲みながら、目の前に広がる広大な牧場を見ながらととのうっていう最高のサウナ『ミルクサウナ』を作ってしまったほどなんです。牛を見ながら入れるサウナなんて、聞いたことないでしょうね(笑)。真冬の牧場なんて今まで誰も行きませんでしたが、なかなか予約取れない人気のサウナになりました」

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しんむら牧場
後ろのコンテナがサウナ室
サウナ内からも見られるこの景色。外気浴スペースでは搾りたての牛乳が供される

北海道のサウナルートを広げていきたい

 伝説のサウナツアーから帰った林は、地元を巻き込みその体験をビジネスに昇華させていく。フットワークの軽い十勝のビジネス人たちの気質と相まって、フィンランド式サウナが広まるのに時間はかからなかった。

「十勝は開拓精神を持っており、民間のつながりが強く、信じ合うんですよね。なので個々の施設ではなく、“十勝=サウナーの聖地”になれればいいなと思っています。

 また十勝だけでなく北海道全体のサウナ振興につながればと思い、現在は根室振興局にある羅臼町にアドバイスをしているんですが、『日本サウナ史』を上梓された草彅洋平さんが、日本のサウナの発祥は18世紀末の根室だっていうことを調べてくれまして。フィンランド人を父に持つアダム・ラクスマンが大黒屋光太夫を連れてロシアから帰国し、根室に係留している船の岸辺にスモークサウナ小屋を建てたという史料が残っていたんです。