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「日本だけがノンプロなんです」

 眞鍋は、鹿児島合宿の初日を急遽休みにして、選手らを知覧特攻平和会館に連れて行くことにした。

「でも、悩みましたよ。女性だし、特攻隊の惨劇を目の当りにしたらかえってショックを受けるんじゃないか、って。ただ、不幸な出来事ではあるものの、日の丸を背負う覚悟は僕らも同じ。もし、何も感じてもらえなくても社会勉強にはなるって考えたんです」

 眞鍋は海外遠征に行くと、その土地にふれるようにと度々休みを与えた。しかし選手らは疲れているせいもあり、2~3時間もするとホテルに戻ってくることが常だった。知覧特攻平和会館もすぐに飽きるかも知れないと懸念したが、博物館に足を踏み入れた途端、選手たちは固まった。

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合宿初日、知覧特攻平和会館に選手たちを連れていった眞鍋政義監督 ©JMPA

 写真や遺品に涙し、少年兵の遺書を読んで嗚咽を漏らしている。語り部の話にハンカチで顔を覆う。当時の状況が分かる視聴覚室では、声を上げて泣いた。何時間経っても誰1人、外に出ようとしなかった。家族に思いを募らせながらも、国を守るため、空に散ったいたいけな少年たちの史実に、選手らは改めて気がついた。自分たちが好きなバレーが出来る環境は、こんなにも悲しい犠牲の下に成り立っているんだと。

 眞鍋がしみじみ言う。

「あれから選手たちの目つきが変わりましたからね。日の丸の重みの意味を肌で感じてくれたんだと思います」

 眞鍋が選手に自立をうながし、国を背負う覚悟を意識付けたのは、こんな理由があった。

「海外のバレーはすべてプロ。韓国だってそう。日本だけがノンプロなんです。人生や生活をかけているプロと、企業に守られているアマチュアが試合をして、アマチュアが勝てるはずが無い。でも僕らは日本代表である以上、プロに勝たなくちゃならないんです。僕らが勝つには、日の丸の誇りや日本を背負う気概をいかに強く持っているかにかかっている。その鍵になるのが選手の主体性なんです」