アルコールの「適量」
それでは最後に、「お酒」について考えていきましょう。アルコールが、食道、大腸、肝臓、乳房などのがんのリスクを上げることは間違いありません。
ただ、「適量」を順守するのであれば、がんのリスクを大きくは上げないことがわかっています。その適量とは、「一週間あたり日本酒換算で7合」というもの。つまり、毎日飲むのであったら1合が適量ということになります。
厚生労働省が示す「健康日本21」でも、アルコール摂取については「節度ある適度な飲酒」を奨励しており、その「適量」について、一日平均純アルコール換算で約20グラム程度とし、女性については男性よりも少ない量が適当である、としています。
一方、がん研究振興財団が作成した「がんを防ぐための新12か条」というリーフレットでは、「科学的根拠に基づくがん予防とは」として飲酒の目標量が設定されており、ここでも健康日本21とほぼ同じ水準である「一日当たりアルコール換算で23グラム」という数値が示されています。
この「アルコール換算で23グラム」という数値を実際のアルコール飲料に当てはめてみると、日本酒で1合、ビールだと大瓶1本、焼酎や泡盛なら1合の3分の2、ウイスキーやブランデーならダブルで1杯、ワインならボトル3分の1本程度がそれぞれ相当量となります。
とはいえ、実際には仲間と飲みに行って1合だけで切り上げられる人は少ないでしょう。普通は酔いも手伝って、ついつい2合、3合と飲んでしまうものです。
そこで生きてくるのが「一週間単位」の有効性になります。
先ほども触れたとおり、1日では達成できなかった目標も、他の曜日で調整し、7日目に帳尻があっていれば大目に見る、というのが一週間ルール。お酒についても、泥酔するほど飲むのは論外ですが、常識的な範囲内であれば多少の飲み過ぎも許されるのではないでしょうか。
その代わり、別途休肝日を作って、一週間の総量で7合以内に収めていれば問題はありません。決して難しいことではないはずです。今回の献立にはアルコールは入っていませんが、飲む人は、これを目安にしてもらえればと思います。
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本稿の献立は、管理栄養士で料理研究家の牧野直子さんに、「身近な食材を使って、誰でも気軽に作れるメニュー」という条件で考えてもらいました。いずれもがん予防に効果的な素材を使い、食べておいしいメニューばかりです。
これを見ると、この章のタイトルである「がんにならない食生活」が決して難しくないことが分かってもらえると思います。ぜひ参考にしてください。