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連載サウナ人生、波乱万蒸。

ぎょうざ屋のカウンターの奥に脱衣所が サウナ→街中華→鴨川が京都の天国だった

ぎょうざ屋のカウンターの奥に脱衣所が サウナ→街中華→鴨川が京都の天国だった

日本サ飯紀行 京都編#1

2022/05/31
note

 奥にある座敷に通される。ぎょうざ湯同様、京町家は奥に座敷がある造りが多い。薄暗い座敷の窓が開け放たれ心地よい風が抜けていく。まるで小津安二郎の映画の登場人物のになったかのような気分にひたっていると、注文した瓶ビールと共につきだしが数種類運ばれてくる。まずはビールで渇いた喉を潤す。生き返る…。

 今日のおばんざいは野菜の煮物、ぜんまいの煮物、おからの炊いたの。どれもシンプルながらきちんと仕事がされている。ぜんまいの煮物をかみしめれば、素材としみ込んだ調味料の味わいが口中にやわらかく広がる。先ほどのパンチの利いた中華とはまた違った、優しいながらも酒のアテにぴったりの日本の味だ。前菜3種でビールの残りはあと僅か。

 

 経木に書かれた風情あるメニューから京都名物の鴨ロースときずしを注文。満を持して日本酒に切り替える。気付くと後ろの席にもお客が。みんな赤垣屋で飲めることに幸せを感じている。良い酒場に共通するのは客がみんな笑顔なことだ。なんてことを思いながら残りのビールをちびちび飲っていると供された1セット目『きずし』。

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 いわゆる〆鯖だが、関東のそれとは対照的。酢〆された肉厚の鯖、その上にはたっぷりのおろし生姜、横には大根のツマ、さらにはその上から追い酢をたっぷりかけてある。まさに京都の酒場の矜持。口に含めば鯖の脂のうまさが口に広がり、それを洗い流すかのようにショウガと甘酢の香りが追いかけてくる。すでに口の中は水風呂になっている。

 
 

 その味わいに酔いしれ始めた頃、2セット目、真打『鴨ロース』が登場。皿の上にたっぷりと広がる煮汁に浸かった、なまめかしいピンク色の合鴨のスライス。口に含めば絶妙な火入れ加減で手間暇かけて蒸し煮された何層にも重なる味わい。極上のサウナに入った鴨の温冷交代。ほのかに残る野性味が官能的なまでに口の中でしっとりと溶け合う。その恍惚感を現実に引き戻してくれるのが付け合わせのレタス。その絶妙なバランスに気が付くと酒がどんどん進んでいる。サウナの後はご飯が美味い! ちょっと酒が回ったか、もはや言うことも普通だ。

 さあ、この辺で河岸を変えて、サウナガチ勢のママがやってる祇園のスナックでサウナ談義に花を咲かせるとしよう。明日はどんなサウナ、どんなサ飯との出会いが待ってるのだろう。

INFORMATION

◆ぎょうざ湯(夷川餃子なかじま団栗店)
 京都市東山区団栗通大和大路西入六軒町206-1
 075-533-4126
 https://www.nakajimagyoza.com/

◆赤垣屋
 京都府京都市左京区孫橋町9
 075-751-1416

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