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 その裏では、莫大なカネと捨て身の度胸を武器に、ひたすらあがき、群がる敵を叩き伏せ、社会の階段を駆け上がった修羅の道がある。法律、社会倫理を無視して稼ぎまくったカネで仲間を集め、官僚を手なずけ、強大な権力を握った角栄は、その代償として《金脈問題》で総理の座を追われ、《ロッキード事件》で止めを刺された。

 受託収賄罪等の容疑で逮捕され、総理経験者で初めて刑事被告人となり、金権政治家、闇将軍、カネに汚い悪徳政治家との汚名を着せられた角栄には、心の奥底に秘めたルサンチマンがあった。

 角栄の番記者を務めたジャーナリスト、早野透の『田中角栄』に元官僚の長老政治家が角栄を諭す、なんとも切ない一節がある。

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《「総理が札びらを切るなんてみっともない。やめなさい」と言うと、角栄は「じいさん、あんたには学歴もある。高級官僚だった自尊心もある。だが、おれには何もない。学歴もない。しがない馬喰のせがれには、これしかないんだ」と涙を流したというエピソードが伝わる》

宮内庁長官は昭和天皇の政治的利用を拒否する、と角栄に迫ったが… ©JMPA

角栄が50年前の北京で見せたユーモアとは?

 いま、角栄が総理なら、との声は方々から聞かれる。ロシアのウクライナ侵攻でゼレンスキー大統領が発揮したリーダーシップが強力なだけに、その声は切実だ。