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「丸の内にはこのクリニックが必要です」働く女性の健康を守るクリニック立ち上げのために直談判したところとは?

2022/06/10

「まるのうち保健室」プロジェクトの調査でわかったピルの活用法

 女性のためのクリニックを立ち上げるという目標は達成したが、佐々木さんの「活動」は今もなお続いている。実は佐々木さんが、最初に井上さんを訪ねたのも、三菱地所が2014年から働く女性のための「まるのうち保健室」プロジェクトを推進していたからだ。「まるのうち保健室」では、働く女性らが自らの健康を学び、キャリアや人生の選択肢を得るということを目的に、女性の健康リテラシーの向上をサポートしている。佐々木さんはこの活動に共感をし、昨年から同活動に参加している。

クリニック内の様子 ©文藝春秋/撮影・鈴木七絵

「『まるのうち保健室』のプロジェクトとして、『三菱地所』と、私が取締役を務める『ファムメディコ』、神奈川県立保健福祉大学が産学医連携して、丸の内エリアで働く女性たちの『健康実態』や『就労環境』などの疫学調査を行いました。その調査結果を今年3月『働く女性ウェルネス白書 2022』として発表したのですが、その中で新たに分かったことがありました。

 例えば『ピル』の服用についてですが、『ピル』服用は妊娠を避けるためというようなイメージが世間的にはあると思います。ところが、実際は、月経痛やPMSの緩和といったヘルスケアの目的で服用するケースが多くなっていることがわかりました。『まるのうち保健室』が2014年当時に行った調査では『生理をコントロールするためにピルを服用している』と答えたのは、わずか数%だったのですが、今年行った調査では15%と、全国平均の5倍以上の結果が出ました。(※参考 Contraceptive Use by Method 2019によると、2019年の日本のピル服用率は2.9%といわれています)

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『ピル』を服用することで自ら生理をコントロールすることを是とするように女性の認識が変化してきているのです。2019年に経産省ヘルスケア産業課が調べた『健康経営における女性の健康の取り組みについて』では生理に伴うパフォーマンスの低下による労働損失はおよそ4911億円にものぼるとされます。ピルの使い方を正しく理解して服用すれば、女性がより働きやすい環境が作れるかもしれません」

ブランケットも自由に使える ©文藝春秋/撮影・鈴木七絵

佐々木さんが「まだまだやりたいこと」

 佐々木さんにはまだまだやりたいことがたくさんあるという。

「クリニックの運営だけではなく、『子宮頸がん』の検診をすれば大丈夫という認識を是正する活動にも引き続き力を入れていきたいですね。『経膣超音波(エコー)検査』をしなければ、女性の多くが罹る『子宮筋腫』や『子宮内膜症』といった疾患は発見されづらいという事実を、改めて伝えていきたいです。“丸の内”で働く女性たちの意識、行動が変われば日本の女性も同じように変わるのではないかと思っています」

 佐々木さんはその信念の元、今日も奔走している。

©文藝春秋/撮影・鈴木七絵

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