1ページ目から読む
7/7ページ目

7 四谷コーポラス(1957年/日本信販)

「四谷コーポラス」(新宿区四谷本塩町)は、様々な伝説を身に纏っており、まさに民間分譲マンションの嚆矢であった。民間の供給主体による一般分譲(主として個人を対象に)された第一号物件である。

四谷コーポラス(2017年3月撮影)

 分譲が行われたのは1956年9月。上記のすべてのマンションに言えることであるが、「マンション法」が1962年に施行される前の分譲であり、マンションを所有する対象とするために必要な様々な概念(例えば土地と建物の不可分性など)が抜け落ちていた時代に、売買契約書にこれらの法概念を盛り込んで問題を解決するという画期的な分譲方法を採用した。

四谷コーポラスの間取り図面

 それと同時に、マンション管理規約をやはり売買契約時に「合意」して取り決めている。この中には購入者=区分所有者は自動的に管理組合員となることが定められており、6年後の区分所有法の成立を待たずして、現在のマンションのあり様を完成させた記念碑的作品である。このマンションの契約書面や管理規約はマンションの歴史の上で極めて重要な資料と言える。

ADVERTISEMENT

 すでに建て替えが行われたため、マンションそのものは現存していない。「宮益坂ビルディング」の名は残った一方で、「四谷コーポラス」の名は残らなかった。