いまでは「風景の一部」になった古びた団地……。しかし、それらは歴史を作った「レジェンド」だった――。
全国に16万棟あると言われるマンション。その中には、それ以降の歴史を変えた「記念碑的な分譲マンションたち」がある。マンション史について、33年にわたってマンション市場を調査してきた不動産鑑定のスペシャリスト・井出武氏(東京カンテイ市場調査部上席主任研究員)が紹介する。
第3回となる本稿では、1970年代を中心に建築されたマンションのうち、いわゆる「団地」と呼ばれるような、公団や公社が供給した物件について、写真や間取りとともに挙げてもらった。(写真提供:東京カンテイ。タイトルのカッコ内は「供給年/供給主体」)
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15 西三田団地(1966年/日本住宅公団)
「西三田団地」(川崎市多摩区三田)は日本住宅公団が供給した44棟からなる団地で、総戸数は1108戸と、単独のマンション・プロジェクトとして1000戸を超える分譲が行われた最初のマンションである。
44棟はすべて4階建てか5階建てで1966年11月に竣工している。一部で価格表が未入手であるが、平均価格は310万円で坪単価が15万円で分譲された。一部では71.47㎡の広い間取りが採用されている。この広いプランは「3DK」または「3LK」と表示されており、日本住宅公団の間取り表示の過渡期的な存在として興味深い。
全敷地の中心にはスーパーと病院が建設される計画で、この物件の隣接敷地には中学校、小学校や幼稚園が設置されており、生活に不自由のないようインフラを整えた設計となっている。小田急小田原線「生田」徒歩8分という通勤利便性もあるためか、既に築55年となっているが、2021年7月には3階住戸で1900万円前後の売り事例が発生している。全棟エレベーターがない。