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築55年エレベーターなし、足かけ19年かかった分譲、だが…時代を変えたナゾの“レジェンド団地”

築55年エレベーターなし、足かけ19年かかった分譲、だが…時代を変えたナゾの“レジェンド団地”

伝説マンションBEST45 第3回・1970年代「団地の時代」編

2022/06/25
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16 富士見町住宅(1967年/東京都住宅供給公社)

 都営団地「富士見町住宅」(立川市富士見町)は、多摩ニュータウンの「永山団地」が出現する1971年に先立つこと4年前に竣工した。賃貸棟15棟と分譲棟20棟からなる全35棟のかなりの大規模団地であった。賃貸棟を含めると1000戸を超える戸数規模であるが、分譲戸数は876戸に及ぶ。

筆者の家があった富士見町住宅18号棟、手前は“たぬき公園”(2009年2月撮影)

 前述の「西三田団地」と同様に街区の中心にスーパー、生活利便施設(郵便局など)や保育園が備えられていた。この団地は、非常にゆったり建築された物件で、敷地内を残堀川や高圧線が通っている関係で、至る所に児童公園や広場がある反面、当初から駐車場が極めて不足する状況となっていた。

 JR中央線「立川」からバス10分。本来は駐車場が多く必要となる立地ではあるが、駐車場を犠牲にして公園や緑地を確保したともいえる設計である。

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団地内のすべての公園には愛くるしい車止めが配されている

 実は、筆者もこの団地に4歳から14歳まで住んでいた。20号棟の手前に配された愛称「カエル公園」(正式名称は“たぬき公園”)など、車止めや遊具のデザインは今なお愛くるしく古さを感じない。間取りは2タイプ(それぞれに左右対称型がある)しかなく、友だちの家に行ってもトイレの場所や使い方は聞く必要がない、というのが子どもながらに便利であった。

 現地に立つと、このような空間が一つ残っていてもいいような気がする。2022年6月には800万円(坪60万円)前後の価格で売り事例が発生している。