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築60年でも7億円で売れて…〈一見普通に見えるのに…〉時代を変えた伝説のマンションとは?

伝説マンションBEST45 第1回・1950年代「黎明期」編

2022/06/24
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2 宮益坂ビルディング(1954年/東京都)

 東京都が供給主体となり1954年に竣工した「宮益坂ビルディング」(渋谷区渋谷2丁目)は、分譲という形で供給された第一号物件である。

 渋谷区渋谷2丁目、JR渋谷駅から徒歩2分という恵まれた立地条件で、分譲価格も相当高額であったと言われている。残念ながら価格に関する情報は当社に残っていない。単棟で最高階数11階と当時としては非常に大規模なマンションであった。1953年に分譲され、翌1954年3月に竣工している。

 当社のデータでは1988年に最初の中古売り事例が7150万円(39.40㎡)で現れるが、1990年10月には1億5800万円(41.76㎡)まで上昇している。この時すでに築36年であった。建て替えが決まったあとの2013年には、築59年でありながら2億円以上(70.20㎡)の価格で売り事例が出ている。

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「宮益坂ビルディング」は分譲マンションの第一号であるためか、または「宮益坂ビルディング」はこの名そのものがある種ブランド化していたこともあるかもしれない。

宮益坂ビルディング渋谷タワー(2020年10月撮影)

 2020年に建て替えられ、「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」(2020年/宮益坂ビルディングマンション建替組合)として竣工した。建て替え事業に参画した旭化成不動産レジデンスが、この名を残そう、マンションの出発点を記憶に残しておこうと、旧マンション名を新マンション名に冠した。

 マンションの建て替え事業では、旧マンションの名前自体が「古さを感じさせる」等の理由で、建て替え後にはまったく別の名前がつけられることがほとんどだ。

 名前を消してしまうとその記憶まで風化して失われていく。このような“記念碑的作品”の名はできれば後世に残して欲しいと願う。建て替え後の物件からすでに中古市場には売り事例が発生しており、1億6200万円(48.22㎡)となっている。

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