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11 川口アパートメント(1965年/川口エンタープライズ)

「川口アパートメント」(文京区春日)は1964年10月に分譲され1965年6月に竣工した。直木賞作家・劇作家の川口松太郎が自宅を建築するために高級アパートメントを併設する形で世に出たマンション。86戸が分譲され、施工は竹中工務店である。

川口アパートメント(2018年11月撮影)

 住戸の中には専有面積が300㎡を超えるものが確認できる。この住戸は川口松太郎氏の自宅だろうか。超大型住戸という点で見ると、200㎡クラスの住戸が存在していた「コープオリンピア」はメゾネット形式だった。1フロアで300㎡を超える面積を持つ本物件は革新的な構造を持っており、貴重な存在である。

川口アパートメントの超大型住戸には文学者ゆかりの物件らしく「書庫」の文字も

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 多くの文士たちが半ばサロンのように出入りしたという点も、この物件を有名たらしめている。また建築コンセプトとして“高級マンション”を目指していたという点でも、現在の高級マンションの嚆矢とも言える存在である。2021年の売事例では坪単価が200万円弱となっており、港区や渋谷区の物件と比べるとやや低い価格となっている。