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2022/06/26

37 ドムス南青山(1988年/大建ドムス)

 このように見ていくと1988年とは大建ドムスと「ドムス」ブランドの年だったのかも知れない。前項の「ドムス広尾」とこの物件を含めて3物件が竣工している。

 戸数規模は小さいが物件の平均価格はいずれも10億円を超えるため、それ相応のリスクがあったはずである。この物件は、この種の高額マンションが飛ぶように売れ、「高ければ高いほどよい」と考えられた時代の代表作と言えるかも知れない。

 ドムス南青山(港区南青山7丁目)の平均坪単価は2913万円で、この物件は先に紹介した「有栖川ヒルズ」の2947万円に次いで歴代最高坪単価ランキングの2位となっている。「有栖川ヒルズ」の竣工はこの物件の3年後(1991年)なので、分譲時はこの物件が最高坪単価だった。

ドムス南青山の外観写真(2015年10月撮影)

「ドムス」シリーズは1階に最高価格の住戸があり広い専用庭を持っているという特徴があるが、この物件も同様。この物件の象徴的な間取りを例示したが、この間取りの中でひときわ目を引くのが、主寝室の手前に設けられた「前室」である。

ドムス南青山間取り。珍しい「前室」の表記が

 古典的な日本家屋では「次の間」や「控えの間」があり、お館様の従者が侍る部屋となっていた。このスタイルは現在にも残っているが、それを目にするのはほとんどが和室のある戸建ての高級住宅である。

 この物件の「前室」は主寝室とミニキッチンに隣接し、行き来できるようになっているため、文字通り「次の間」として機能していたことがわかる。

 大建ドムスは、この物件にはすべての部屋でメイドルームを廃止している。その代替として「前室」が表れたと考えられるが、私はこのような「前室」を他のマンションで見たことがほとんどない。この物件は価格が非常に高額で、当時歴代1位にあったと言うことだけではなく、間取りの歴史を見る上でも大変興味深いものとなっている。