38 ホーマットイースト(1977年/丸紅)
「ドムス」と並んで、当時の超高級ブランドとして知られるのが「ホーマット」シリーズだ。このブランドは分譲、賃貸共にあるが、実はバブル期には新規供給されていない。バブル期には分譲から手を引いていた感がある。
そもそも「ホーマット」シリーズは日本に勤務する外国人向けのマンションだった。ただバブル期には非常に引き合いが多く、人気を博したブランドである。そして今なお高い人気を誇っている。
「ホーマット」シリーズは分譲主体が丸紅から興和不動産(現:日鉄興和不動産)に代わるが、これは「ホーマット」マンションシリーズの企画・設計主体がホーマットホーム株式会社という独立した企業であることによる。
ホーマットホームは外国人向けの賃貸マンションを供給するにあたって、住んだ人が母国に帰った際に日本の文化をそのまま持ち帰って欲しいという信念があった。そのため、日本の文化や和のテイストを取り入れる空間の提供を重視していたという。
「ホーマットイースト」(千代田区一番町)は大林組の施工物件で、平均専有面積は120.72㎡と当時としても広い物件である。8階建てで総戸数は44戸。築45年となるが現在でも中古流通坪単価が300万円を下回らないヴィンテージマンションである。1977年は「ドムス青山」の竣工年でもあり、高級ブランドマンションの分譲が本格化した年と言える。
「ホーマット」シリーズでは、バスタブ内で体を洗う習慣に基づいた洋式の浴室設計のイメージが強い。だが、この「ホーマットイースト」は設備概要に「和洋折衷バス」と表現されているように洋式のバスとはなっていない。外国人にも日本的なお風呂の良さを示す狙いがあったのかも知れない。
しかし、その後の賃貸供給のホーマットマンションでは多くが洋式バス仕様となっている。専用庭は植栽や灯籠の配置など和風で統一されており、バルコニーも石敷きにしているなど、かなり珍しい仕様となっている。