彼女の告別式にはすごい人数の友達が来て、女の子も男の子も泣きじゃくっていました。ああ、私の妹は友達がこんなに多くて、行きたかった大学に行って、毎日楽しそうで……、見事な人生だったんじゃないかって。それを、ただ短いってだけで可哀相としか思わないのは失礼だろうって、考えるようになったんです。
それからですね。私の生活も変わっていきました。外に出るようになりました。もう一度どこかの養成所に入ることも考えましたが、どこも入所時期は過ぎてしまっていたので……、バイクの合宿免許教習に申し込みました。
――え、バイク?
後藤 はい(笑)。何かをしたいって気持ちがありました。私は学生時代からバイクが好きだったし、妹もそうでした。二人しておばちゃんになって暇になったらツーリングとかしてたかもしれない。もうそれは叶わないけど、共通の好きだった物を、いま手に入れてみようかなって。
「スタートが切れた気がしました。何より久しぶりに楽しかったんです」
――吹っ切れた、ということでしょうか?
後藤 引きずっていたとは思います。いや、もうずっとこれは引きずっていくんでしょう。引きずるのは、一緒にいる感じもして、今は苦じゃないですけどね。
でも、まずバイクの免許を取れたことで、スタートが切れた気がしました。何より久しぶりに楽しかったんです。「やりたいことを躊躇せずにやろう」と思っていた自分を思い出したと言うか。その勢いで、「株式会社 ぷろだくしょんバオバブ」の養成所に電話をかけました。
――あれ、養成所の募集期間は過ぎてたんですよね?
後藤 とっくに過ぎてましたね。それで「生徒の募集は来年2月以降です」って断られたんですけど、「じゃあ、事務所に入れてくれませんか?」って。相手もギョッとしてました(笑)。
でも、たまたま電話を受けた人が事務所の部長で、「とりあえず履歴書を送って」と言ってくれたんです。それでイレギュラー的にオーディションをしてもらい、養成所に入ることができました。
――後藤さん、基本的に直談判なんですね。
後藤 そうですね、常識を欠いた直談判が多いですね(笑)。
「オーディションを受けさせてあげられなくなっちゃうよ」
――事務所はどういう基準で選んだんですか?
後藤 洋画の吹き替えをやりたかったので、吹替のベテラン声優が多く所属する老舗のプロダクションを選びました。
――ではアニメの声優をやるつもりはなかった?