後藤 当初はありませんでした。その頃、アニメ声優の業界では、顔出しや歌の仕事も増えてタレント性も必要になってきていました。でも私はあいかわらず太っていたし、ニキビもいっぱいあって、人前には出たくなかったんです。
なので新人の頃は顔出しも歌もNGにしてました。洋画吹替の現場では顔出しの案件はほとんどないので特に影響はなかったです。歌は、まぁ、単に自信がなかったからなんですけど……(笑)。
――病気のことは周囲には秘密にしていた?
後藤 隠してました。体には気をつけて配送される病人食を食べていたり、表面に出る症状は免疫抑制剤で抑えたりしていたので、言わなければバレないだろうと。
病気のせいでキャスティングしてもらえないかもと思うと、やっぱり、秘密にしてしまいますね。
そうして若手時代は洋画の吹替を中心にやっていたんですけど、あるとき事務所のデスクから「顔出しも歌もNGにしてたら、アニメのオーディションを何も受けさせてあげられなくなっちゃうよ」と言われたんです。
――それでアニメのお仕事も受けるようになった、と。
後藤 2004年のことです。ちょうどそのとき、仕切り直しになったオーディションがあって「前回、候補に出してない人を出してほしい」という要望つきで、アニメの主役オーディションの話が来ていたんです。事務所内で、そのオーディションにまだ出していない候補を選ぶ際、私にも白羽の矢が立ったそうです。
“クセの強い声”がアニメ向きに
――それまでNGにしていたものをOKするのに、抵抗はありませんでしたか?
後藤 洋画の吹替をやっているときによく、音響監督に「後藤の声はクセが強くて、正統派の役では使いづらい」と言われていたんです。音として悪目立ちする、と。だから自分でも「私はずっと主役級じゃない、クセの強い脇役をやっていくのかな」と残念に思っていたところもあって……。
でも、事務所の先輩のたてかべ和也さんから、「声が悪目立ちするという欠点は、アニメでは武器にもなる」「毒は薬にもなる、それが声優の世界だ」と言ってもらえたんです。
――先代のジャイアンですね。たしかに印象的な声の声優さんでした。
後藤 それはすごく励みになりました。アニメだと目立つ声はひとつの武器なんだ、私の声もそうなり得るかもしれないんだ、と。
それで、アニメに挑戦するために事務所に「私、下手ですけど、歌OKにします。だけど、私が歌ったらエライことになりますよ」と言ってオーディションを受けたら、主役を任せてもらえたんです。
こんなに幸せなことってなかったです。主題歌も歌うことになって、私のレコーディングだけ凄まじい時間がかかってしまいましたが……(笑)。