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「人から質問されて、そして説明するって、こういうことか」
「そんな風に謙虚な人っていいね」
いいね、とか綺麗な女子に言われると、モテない男子は緊張する。やめてほしい、本当、勘違いしそうになる。
「西岡くんって、英文法得意なの?」
そして不意に、そんなことを聞かれる。
「え、まあ、得意な方かな?」
嘘である。得意でも不得意でもない。英語自体苦手な中で、とりあえず長文よりは解けなくはないのは英文法、というくらいである。
さっきのやりとりも、「英語ってマジで何から手をつけていいかわかんないから、とりあえず英文法から始めるか」と答えただけのものだった。
「私、英文法苦手なんだよね。今度また、教えてよ!」
「え、ああ、僕でよければ」
「ありがとう!」
そう言って、彼女は去っていく。
ちょっと待って、反射的に返事をしたけど今とんでもないこと言ってなかったか?
今度また教えてよ! いやいや、絶対あなたの方ができるだろう、星川さん。そう思いつつ、はたと師匠の言葉を思い出す。
「ああ、人から質問されて、そして説明するって、こういうことか」
優等生だと周りから認知されたら、誰かが質問をしてくる。星川さんは、授業中に頻繁に当てられたり、自習室に入り浸っている僕を見て、優等生だと認識したのだろう。そして他の生徒も、そんな風に誤って認識してしまうこともあるのだろう。
そうやってきっと、優等生ではない僕は、優等生になっていくのかもしれない。
「英文法、勉強しなきゃなあ」
とりあえず、そう決めたのだった。