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「企画はなんとかして“通す”もの」テレ東敏腕P4人が明かす《会社をサバイブする超企画術》チェリまほ、フルーツ宅配便、ギルガメッシュFight…

テレ東プロデューサー座談会#2

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企画を上層部に通す超基本的な「コツ」

──自分の企画を通す極意はありますか。

濱谷 これは超基本ですが、「自分の企画が、いかに募集内容に寄り添っているかを、しっかり書くこと」ですね。

 実際はそんなに合致していなくてもいいんですよ(笑)。ただ、読む人にそうとは気づかれないくらい、説得力を持たせつつ書くのがポイントです。

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──なるほど。やはり、テクニックがあるんですね。

濱谷 (笑)。たくさん企画を通していたら、周囲がだんだん「この人に託せば、実現するんじゃないか」と思ってくれるようで、外部の人から企画の相談を受けることも増えました。

 原田知世さん主演の『スナックキズツキ』(2021)も、最初は「濱谷さんが好きそうな原作マンガがありますよ」と知り合いのプロデューサーに提案されて。ところが社内提案したら、「原作は魅力的だけど、ドラマとしては地味」と却下されたんですよ。

 そこで、《ドラマ24》の企画募集要項に沿って打ち出すポイントを明確にして、「このマンガには、いかに映像化しがいのある素敵な”余白”があるか」を強調したら、通ったんです。他の人が僕に相談してくれたことで作品を世に出せるというのは、年齢を重ねてから覚えた喜びです。

――伝説のお色気番組『ギルガメッシュナイト』をつくったクリエイターの奮闘劇を描いた『ギルガメッシュFight』も濱谷さんのプロデュースですよね? この時代によく企画が通りましたね。

濱谷さんがアソシエイトプロデュースした新ドラマ『ギルガメッシュFight』。2022年12月24日から有料配信サービス「Paravi」で配信がスタート ©テレビ東京

濱谷 今の時代には放送できないと思います(笑)。ドラマ版もやるなら思い切った方が良いと思い、Paraviオリジナルで提案しました。「ドラマで描かれるのは、単純なエロではなくて、エロをエンターテイメントにしようとしたクリエイターたちの奮闘劇です」みたいな言い訳をたくさん企画書に書いたから実現できたんですかね?

 僕は立ち上げしか関わってないので、その後、工藤里紗Pがとんでもなく大変な思いをしながら完成までこぎつけたと聞きました。12月24日から配信がスタートしたのですが、一視聴者として楽しみつつ、工藤Pの大変さを思うと申し訳ない気持ちでいっぱいです……。

 この作品も懇意の作家さんからギルガメドラマ化の提案を受けて、相談に乗ったのが始まりです。

祖父江 私の場合は濱谷さんと逆で、相談に行く側ですね。

 たとえば原作ものの企画で、私が「原作を読めば、絶対に面白いとわかるはず!」と確信が持てる作品だったら、社内で企画選考に関わる人に直接持っていき、「読んでください」と渡します。

祖父江里奈さん

──行動派なんですね。でも偉い人は、その原作を本当に読むでしょうか?

祖父江 全部は絶対に読んでもらえないんですよ(笑)。それはわかっているので、前もっていろいろ仕込んでおきます。

 たとえば、エピソードがたくさんあるストーリーなら、あらすじを各話でまとめた資料を添え、「第〇話と第△話だけでも読んでください」とインデックスをつけるとか。

──そうすると、渡された側は「そこだけ読めばいいのか」と気が楽になりますね。

祖父江 それが狙いです。中でも見逃してほしくない部分は、「〇話からは絶対面白くなるので、そこまでは我慢して読んでください」というようなガイドをつけますね。社内の行政把握や根回しは、プロデューサーとしての必須業務です。

松本 僕は、自分の筆が走る企画は通ります。逆に、無理して書いた企画はほぼ通らない。

──企画書を書く時点で、ある程度わかるものですか。

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