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松本 僕は濱谷さんのように、次々といろんなアイディアが出てこないので、企画数自体が少ないんですよ。企画のためにネタ探しにいっても何も見つからなくて、全然別のこと、たとえば趣味の麻雀や、ディズニーランドで人を見ているときに思いついたりします。

 そこから企画書を作るんですが、書くうちに「ビビッ」とくる瞬間がときどきあって。「自分の中でテーマが納得できる、おそらく世間にも求められるだろう、会社も受け入れるだろう」という3つが重なると、スイスイ書けます。

「数字の力」で説得力を補完する

本間 私は企画の募集要項も鑑みながら、自分のやりたいテーマとか興味のあることを意識した上で企画を考えることが多いです。

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 たとえば『チェリまほ』は、人との繋がりや心の機微にフォーカスを当てられる作品をやりたいなと思っている中で、豊田悠先生の原作と出会いました。

──いかに原作に共鳴できるか、がポイントになりますか。

本間 そうですね。ただ、面白い原作と出会ったとしても、「面白い!」という感覚は私の主観なので、それだけでは濱谷さんの言う”説得力”に欠けるんですよ。

 だから、企画書にする際は、「社会人の〇%がこういう傾向という調査がある」など、原作の要素を反映した具体的なデータをつけたり、共感した層のアンケートなどを添えています。

本間かなみさんがプロデュースする、2023年1月スタートの新ドラマ『今夜すきやきだよ』。恋愛体質の内装デザイナーの「あいこ」とアロマンティックの絵本作家「ともこ」の共同生活を描く。写真はともこ役のトリンドル玲奈 ©谷口菜津子・新潮社/「今夜すきやきだよ」製作委員会

「テレ東らしいドラマ」をつくり続けたい

──皆さんの今後の予定や、野望などをお聞かせください。

本間 私は今、準備している作品があるので、それをたくさんの人に届けたいというのが当面の目標です。

濱谷 僕は、テレビ東京制作という関連会社のプロデューサーも兼務してまして。今はNHKさんを始め、民放他局、配信プラットフォームなどに企画提出して、より幅広いフィールドで作れたらと夢見ています。

 企画自体はテレ東らしい内容かもしれませんが、それを別の場所で作ったらどう変わるのか、より幅広いフィールドで作れたらと夢見ています。

祖父江 私は、1分1秒でも長く現場にいることが目標ですね。私たちは会社員なので、いつ「引退して後輩育成に回れ」と言われるかわからない、現場に立てなくなるかもしれない……という恐怖を抱いています。

※写真はイメージです ©iStock.com

 人数が少ない会社だからこそ、それは遠くない未来かもしれないので、長く現場にいるにはどうしたらいいかを考えています。

松本 僕は今、配信ビジネスの部署にいます。ここで考えるようになったのは、ドラマ制作費を増やすことの大切さです。

 ドラマを作るにはお金がかかるので、会社全体から見ると淘汰されがちなコンテンツなんですよ。でも、制作費が減るとスタッフへのギャランティが減る。すると、スタッフのモチベーションが下がる。この流れが変わらなければ、日本のドラマ界は低調から抜け出せません。

「テレ東ドラマは低予算でも面白い」と言われがちですが、これは決して自慢できることではないと思います。やはり「絵」を作るのはスタッフです。今後ますます配信時代に移行する中、制作費を上げてスタッフのモチベーションを高めていくことは、プロデューサーとして考えるべき大事な仕事だと思います。