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ネット掲示板に「心中相手を探しております」

 00年代前半、自殺などをテーマにしたネット掲示板も多くあった。呼びかけ人の男性は、その一つ、「自殺志願者交流」という名の掲示板で「心中相手募集 関東編」という見出しを立て、書き込みをした。

〈埼玉県に住む者です。一酸化炭素中毒で逝こうと思っています。今冬季に自殺したい方を募集しています〉

 また、同じ掲示板には、無職男性と船橋市の無職女性と思われる2人の連名で、「心中募集」の見出しで次のように書かれていた。

〈心中相手を探しております。方法は、練炭による一酸化炭素中毒死です。(中略)練炭・コンロ・睡眠薬・密封できる部屋。全て揃え終わりました。参加したい人には、睡眠薬などを差し上げます。ただし、女性に限ります。男性だと、トラブルや犯罪に巻き込まれる恐れもありますので。年齢は問いません。やっぱり、独りだと寂しいですからね。場所は埼玉県です。時期は、1月~2月中を計画しています。本気の方お待ちしております〉

実は未遂に終わることも多い

 こうした「ネット心中」は連鎖した。

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 当時、筆者は、ネット心中の呼びかけ人や呼びかけに応じる人たちの取材を重ねた。多くの人は、精神科に受診していたり、カウンセリングを受けていた。また、これまでも自殺未遂や自傷行為を繰り返してきた人が多かった。しかし、悩みを十分に言えなかったり、言えたとしても考え方が変化しにくい状況にあった。

 ただ、ネット心中に至るまでのプロセスは、掲示板やチャットのやりとりだけではわかりにくい。募集をしたり、募集に応じるだけで、ストレス発散になることもあった。あるいは、リアリティを感じ、恐怖を覚えて、そこから先に進むことをためらう人もいたりした。

 やりとりが成立し、日時を約束しても、実際には現れない場合もあった。「性行為」を目的にした人もおり、性的被害にあう女性もいた。

 約束通りに実行しようとして、一人が自殺をしたい理由を話すと、「そんなことで死にたいと思うのか?」「あなたは死ぬべきではない」と、自殺を止めようとする動きも出てきた。そのため、集まっても、自殺をせずに解散するという話も聞いたことがある。いざ実行しようとしても、苦しくて、車のドアをあけて、未遂となったというケースもある。